ジジイに3000円払って爪を切ってもらった話(上)

 足の爪が黝んで膨れ上がり、指の皮膚もヒビ割れ
軽い痛みを一ヶ月以上前から感じていた
仕事で半休が取れたので外科に直行し診察へ

診察室に通されるとその先には、
こちらに背中を向けたお爺さんが机で何かを記入している

診療ベッドに座り、看護婦の指示通りに
診察用の使い古されたカバーの破れた椅子に靴下を脱いだ片足を置く
お爺さんは振り返ると自分の親指をジッと見つめ始めた
どうやらこの人が医師らしい
俺は何の異常も無い親指を真剣な眼差しで触り続ける医師に戸惑いながら
そっと小指を指差し「この小指の方なんですけど」と言うと
「あ、こっちか」とお爺さんが初めて口を開いた

視線を感じたので遠くの受付を見ると看護婦が笑いを堪えている
「うんうん、爪炎(そうえん)だな…」爺さんがこちらを見直して
「これは爪炎、ヤスリか何かで削っていくんだ...
爪がどんどん肥大していって皮膚が炎症起こしてるんだよ
うん、あぁ、やっぱこれは爪炎だ」

自分は思った。爪炎だから何なんだよ、とにかく治してくれ。と

しばらくすると爺さんは急に
机の上に置かれたペン立ての中をガチャガチャ漁りだし
中のペンチを取り出して自分の小指に向けてきた

(爪を剥がされる...!)とっさに足を引っ込める自分
爺さん「動かないで!危ないから」(危ないのはお前だ...!!)

バチンッ バチッ バチッ

静かな診察室にシュールな音が響き渡る
爺さんはペンチで俺の足の爪を切り始めた

最初は椅子の上に切った爪の切れ端を置いていたが
看護婦がその都度拾いに来るので
効率が悪いと思ったからか、途中から
俺の足の親指と人差し指の間の溝を
爪の置き場に変えてきた
見る見るうちに溝が爪の亡き骸で埋まっていく


下巻へ続く


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(о´∀`о)
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バナナ坊主

謎のバナナ。

短編集

バナナ坊主の小話をまとめました、衝撃が走りますよ。
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