呪箱を置く人

8:蒼白い智略

(怒りに打ち震え大粒の涙を流しながら)

 ––– 冒 涜 者 は お 前 ら だ 気 色 の 悪 い 薄 ら 笑 い を 浮 か べ や が っ て

ブ ド ゥ ー も イ エ ー ス ー ス も ア ス ラ マ ン も パ ッ ズ す ら も

こ の 世 の 神 と い う 神 の 首 を 掻 っ 切 っ て 下 水 に 流 し て や る ––– 


 迫る落日は哀愁を帯びる、視界に入る影は物悲しく、影見の様に離れる事を拒んでいる。商談や隠密な会話、堅苦しさが漂う喫茶の中は意味の無い暖色のパネルが壁に並べられ店の雰囲気を作っている。街の通りが見渡せる席に座り地図の様に丸めていた携帯紙を開き、梅子は連絡を入れた。いつも通り直ぐに繋がり、人混みの中から聞こえる甲高い声も変わらずであった『…それは無理だろうなこの歳だし、あたしはあんたみたく恵まれてないから。10年前だったら通って学ぼうと思ったかもなぁ、あとお金があれば……それが遅きに失する事はあるのですよアーヤさん、あたしの事は放って置いてくださいな』濁った会話の後で本題へと入る

『…ボボンガから連絡が来たよ、あの教会の中に地下へと続く部屋があるんだって……違う、古い方。…そう、幽霊が出るって噂の……地下に行くには一階じゃなくて二階に上がらないとダメだって……でも二階に続く階段が見当たらないじゃん?どうやら外から上がって行くらしいよ、司教が夜な夜な入って行くのを見たって言ってたから……そう、地下にあるはず、パッズ典礼書も行方不明の遺言書も…』静かな会話が終わり、梅子は再び携帯紙を丸めて鞄の中へ閉まった。外が暗くなるにつれ街灯と同じ様に店の中が青くなっていく。歳の割には年季の入った皮のジャケットのボタンを上まで閉めて、梅子は店を後にした


(涙が乾いたボボンガは云う)

 ––– だ か ら 相 手 が 俺 で あ っ て も だ よ

そ の 時 が 来 た ら  躊 躇 す る な

     一 瞬 の 迷 い は お 前 を 殺 す

  二 つ 目 は 考 え ず に 全 力 で や れ

                  約 束 し ろ 梅 子 –––


つづく–––

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