呪箱を置く人

6:司教は邪神を祀っている


––– 今更、防腐剤を撒いた処で…… –––


 塒を巻いて乾涸びている蛇の死骸、其処に虫螻共が群がる。弱肉強食は目紛しく変化する、どれ程の巨大な強者だろうと骸になってしまえば恐るるに足らず、自然の摂理を犯す者により食物連鎖は崩壊する。生きるか死ぬか、殺るか殺られるかの中では聞く耳を持たない

ランチタイムの向こう、朽ち果てた教会が姿を表す。扉は全開、奥には出口があり、そこから真新しい教会が見える。朽ち果てた教会が新しい教会へと続く門となっている様だ。その朽ち果てた教会は昔、肝試しの場所として有名であり、蔦に覆われた外壁や二階の窓に設置された首の無い女神像が不気味さを際立たせており、深夜に行くとその窓から女が顔を覗かせると言った話が若者達の間で流行った

それから十数年が経ち、その朽ち果てた教会の土地を買い取った者が現れる。その人物の名はバッキィオと云った。バッキィオはその朽ち果てた教会の先に新たな教会を建て、肝試しの教会を新たな神聖な場所へと変えた。そう云った行いもあり、その後バッキィオは司教へと選出される

しかし、バッキィオ司教はその首の無い女神像を何故か修正しないままであった。司教となり世界各地から信徒が訪れる様になっても、首の無い女神像は二階の窓から出迎えていたのである。そういった司教側の対応に批判の声が上がったが、バッキィオ司教はこう告げた

『あの土地をそのままの姿で残しておく事に意味があるのです。女神像を放置している事に対しての私への批判がありますが、祈る場所はあそこではなく、その奥に建てられた新たな教会であります。私は、こういった対応が神への冒涜であるとは思えません。最後にもう一度言います、“神は我々を見て下さっております”』


つづく–––

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