約束のとき

『約束』と聞いて、あなたは何を思い出すだろうか。
果たせなかった約束。無惨にも、破られてしまった固い契り。
果たして、わたしが初めてした約束は、一体どんなものだったのだろうか。
「もう、決して嘘はつきません。」
と泣きながら母の胸にしがみついた、5歳児の口からとっさに出た、あの言葉がそうだとしたら、わたしは、この世で一番大切な人との約束を破り続けながら生きていることになる。
一体、人がこの世に生を受けてから、どれ程の数の約束をすることだろう。
そして、そのひとつひとつに大切な意味があるとしたなら、いや、それは必ずあるはずだから、無事に果たされた約束も、そうでない約束も、この世界をつくって来た大切な何かに影響を与えてきたに違いない。
人間が、果たさなければならない一番大切な約束って、なんだろう。
自分自身との約束?
大切な人との約束?
それとも、神との約束?
自分自身ととの約束なら、とうにその重要性は、わかって生きてきたはずなのに、気がつけば、自分自身を裏切ってばかりいる。
なりたい自分、きっといつか理想の自分、
本当の自分になれるんだと、堅い決心をして今に至るまでまだ、その約束は、果たせないままの自分に、かける言葉を探している。
「僕のことを信じて欲しい」
そういって、永遠の愛を誓ったあの人には、
無償の真の愛の欠片さえも渡すことが出来なかった。
こんな、わたしを造った神様がおられるとしたら、神様は、一体どんな約束をわたしにして下さるのだろうか?
そして、わたしはどんな約束をすべきなのか。
あなたなら、誰とどんな約束を望まれますか?
今夜、眠りにつくまえにひとつ考えて、明日目覚めたら、どうかわたしにそれを教えてくれるよう約束して下さいますか?

#創作大賞2023 #エッセイ部門

なんと、ありがたいことでしょう。あなたの、優しいお心に感謝