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バトルシャーク第4話

「ほう……」
バナナワニ女王がため息をついた。
びくっとするガニー博士。

女王「気が晴れぬのう……」
ガニー「いかん、キラ、はなれるのだ!」
キラ「え?」

モニター画面に向かっていたオルカ人魚のキラはふりむいたが遅かった!

「ああ!」倒れ付すキラ

ガニー「なんということだ……。解説しよう、Sの女王がメランコリーになると、Mの要素が加わることになり、強力な磁場が発生するのだ!」

女王「あの、バトルシャークとやらが邪魔をして、まだ地球から何も出荷できぬ……。商品がなければ売れるわけも無く、売れなければ、利益は上がらぬ、ゼニーが稼げぬというのは憂鬱なものじゃ……。のう、キラ?」
キラ「……は、はい……」
床から見上げるキラの眼が潤んでいる!

ガニー「ああ、キラは女王のお色気の磁場に捕らわれた!もっと恐ろしいことになる!」

アンニュイな女王のひざにもたれかかるキラ。
キラの黒髪を女王がなでる。
たちまち、白い百合が咲いた!
百合のかほりがあたりにただよう!磁場がますます強力に!

女王「作戦はどうなっているのじゃ?」
ガニーは部屋の隅にへばりつき、涙を流しながら答えた。

「は、はい。眼には眼を、サメにはサメを、と、サメ怪人を改造中で……」

そこへスズキがやってきた
スズキ「だめですガニー博士、サメ怪人が抵抗して……」
ガニー「部屋に入るな!」

スズキは入り口で立ち止まった!
「こ、これは……」

ガニー「そうじゃ。中に入ると恐ろしいことになるぞ。サメ怪人はどうなった?」
スズキ「改造したのですが、バトルシャークと戦うのを嫌がって抵抗しております。
タマサップが力づくで連れてくるところです。」

タマサップ「キュキュー!かついできたぞー」
怪人「いやだあー」
ガニー「部屋に入るな!」

だが、タマサップはもう入ってしまった。
「うわぁー!」
タマサップから血が噴き出す!
……鼻血だ。ブー!
「うおおおおいおおおー!」
タマサップは飛び出していった!

ガニー「遅かったか……解説しよう。単細胞な彼はお色気の磁場に耐えられず、やみくもに走りに行ったのだ!」

取り残されたのは怪人だ。床にへばりついて動かない。
ガニー「何の怪人だ?」
スズキ「ミツクリザメです。容姿コンプレックスがあるらしいので、かっこいいサメに敵意があるかと思ったのですが、気が小さくて。」
ガニー「せめて起き上がれ!ミツクリザメ怪人よ」

ミツクリザメ怪人「なんて、なんて美しいひとたちなんだべ……おら、もう死んでもええ……」
怪人は泣いている。
そして女王とキラをちらちらと見る。じっと見る勇気がないのだ。

女王「面妖な……面構えじゃのう?おぬし、サメなのか?」
ミツクリ「おらー、ミツクリザメだ。いつも暗え深え海の中にいるだで、お天道様の下で戦うなんてとんでもねぇだー」
ミツクリ怪人はひれふしている。

女王「たしかに戦闘むきではないかもしれぬのう。どうじゃ?おぬし、わらわのために、働かぬか?」
ミツクリ「な、なにすりゃええだ?」
女王「何でもいい、売りに出せる物を略奪してまいれ。さすれば、ほうびをとらせる。」
ガニー「女王様、何をこの怪人にほうびとして何をおあたえに?」
女王「わらわがよろこぶ」
ガニー「それだけで?」

ミツクリ「お、おら、やるだ!」

ミツクリザメ怪人は立ち上がった!
「こげな美しい人が喜んで笑ってくれるだな!おら、死ぬ気で取ってくるだ!」
ミツクリザメ怪人、出動!

ミツクリザメ怪人が出て行くと、女王は小さなあくびをした。
たちまちお色気の磁場が消えた。

ガニー「さすがですな、女王様」
女王「当然じゃ。わらわは色香でリニアモーターカーを、この地球なら七回半は走らせて見せるわ。地球をめぐるショバ争いで、アンゴルモアとタイマン勝負したときも、わらわは眉をひそめただけじゃ。あのものは勝手に自滅したわ。もう忘れたか?」
ガニー「地球の西暦で1999年7月でしたな。勝利宣言で女王様の逆鱗にふれたのでした。」

ノストラダムスの預言書は、勝利宣言だったのだ!

一方、ミツクリザメ怪人は
ミツクリ「出てきたはええけんども、何を集めりゃええんだべ?」

とぼとぼ住宅街を歩いていると、
ミツクリ「おや?」

点々と白い円筒状のものが一つ、二つ、あるいは三つと家々の前に置いてあるではないか。
ミツクリ「こりゃー、自由に持っていっていいってことだべぇなー。」
ミツクリ怪人は、ポケットにそれを入れ始めた。
ポケットは亜空間を通ってギルド基地の倉庫につながっている。
せっせと拾うミツクリ怪人。

……賢明な読者は気づいたであろう。ミツクリ怪人が集めているのは、古新聞回収後に置かれるトイレットペーパーだったのだ。
そんなものでいいのか?ミツクリ怪人よ!

ミツクリザメには顔に突起がある。
その先端がどういった機能を持つのか、我々人間にはまだよくわかっていない。
が、ミツクリザメはミツクリ怪人に改造されることによって、
どういうわけかその突起に、トイレットペーパーを見つける能力が備わってしまったらしい。

古紙回収業者には、トイレットペーパーがないという苦情が殺到。
業者が、物陰に置くように工夫しても、元々暗いところの方が得意なミツクリ怪人は、トイレットペーパーを見つけてしまう。
困ったのは業者である。とうとう、見張りをつけることにした、そして……

「くおらぁー!!お前だな、ペーパー泥棒は!」
業者のおじさんに見つかったミツクリ怪人、必死で逃げてたどりついたのが……バトルシャーク本部のある『マリン倶楽部HOOK』であった!
……これも彼の能力か?
そして、出会ったのだ、バトルイエロー・杉田さんに。

たまたま杉田さんは、店に一人だったのだが、怪人をとっさにかくまってくれた!

イエロー杉田「ギルドに改造されたのね……かわいそうに。」
ミツクリ(何て優しい人なんだべ……)。
そう、彼はイエローに恋をしてしまったのだ。

彼のために弁明しておこう。
深海ザメである、ミツクリザメは、出会いのチャンスが少ないので、メスに出会ったらすぐ子孫を残そうという本能があるのだ。
だから、惚れっぽいのである!

さて、バトルイエローによって秘密基地地下にかくまわれたミツクリ怪人。
イエロー・杉田さんはスーパーコンピューターIchthyさんに相談する。

Ichthy「一度巨大化した怪人を我々が倒すのが、手っ取り早いですなぁ、元にもどすには。うーん……」
イエロー「そんな!かわいそうよ!」
ミツクリ怪人は、ますますイエローへの恋心をつのらせるのであった。

一方、トイレットペーパーの搬入がぴたっと止まったことから、ミツクリ怪人の心変わりは、あっさりギルドにばれてしまった。
人間に化けたオルカ人魚・キラが、携帯用簡易フェロモン磁場発生装置”女王のかほり”を使って、海岸にミツクリ怪人をおびきよせる。

ミツクリ「たすけてぇー、おら、行きたくねぇだー、でも、行きてぇだー!」

追いかける杉田、バトルイエローに変身!
キラとの対決だ!
キラは”女王のかほり”を最大出力に!

だが!

イエローが武器を一振りすると、たちまちレモングラスの芳香が!磁場を中和した!
イエローはボーイッシュで中性的魅力がウリのキャラクター、お色気に勝つのはさわやかレモンだったのである!

イエロー「その怪人を元にもどしなさいよ!かわいそうじゃないの!そんな、そんな“へんな顔”に改造するなんて!!」

あああ、イエローは誤解していたのだ……ミツクリザメを知らなかったんだな、不勉強だぞ、イエロー!
ミツクリ怪人は深く傷ついた……

ミツクリ「おらの顔は……生まれつきだぁー!!!」

バトル!
巨大化!
バトルロボ出動!
ちゅどーん!

……そしてミツクリザメは元の姿に戻ったのであった。
イエロー杉田「ごめんね、へんな顔なんて言って。」

全ての生物はその環境に適応した姿を持つ。
ミツクリくんも深海に戻れば、かわいい彼女ができることであろう。

一方、ギルド宇宙船では。

キラ「くやしいです、女王様。申し訳ありません!」
女王「簡易装置とはいえ、わらわのお色気を中和するとは、こしゃくなり、バトルイエロー。だが、作戦としては、まずまずであったぞ。あのパルプ巻は、昆虫から進化した宇宙人の主食と成分がよく似ておる。わらわはワモン星系にコネがあるのじゃ。ワモン星人に売りつければ、今期のノルマを達成できるであろ。やれやれじゃ。」
キラ「うまくいきますか?」
女王「うむ。ちょうど売り切りできると思うぞ。」

どうやら今回の勝負はいたみわけのようであった。


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