ネクタイを買った
最初は父に
父の日のネクタイ

派手好きな父が
好みそうな配色を
ネクタイの海で探した
買える値段で

娘の買ったネクタイを
父は職場で自慢したらしい

父が死んで
遺ったネクタイが
三百本
ネクタイの海
私が買ったネクタイも
捨てられないで遺っていた

恋人やがて夫となるひとに
買ったネクタイは
五本
彼はネクタイをしない職

私が買ったネクタイを
夫は年に数回絞めて
汗染みになると言って
クリーニングに出す
夫も定年が視野に入る年
五本のネクタイも定年だろう