夢の話4

 蒸し暑い日だった。それが急の夕立で、すっきりするかと思ったら、しのつく雨に変わってしまい、むっと湿度だけが息苦しい。

私は道を急いでいた。ズボンが湿って足にからみ、砂利道の小石が左の靴に入ったらしい。右の靴は裏の溝に小石がはまったらしく、歩くたび「ギャリッ、ギャリッ、」と、嫌な音をたてる。

 とうとう我慢が出来なくなって、傘を背中に腰を曲げ、首で柄を押さえながら、私は左の靴を脱いだ。小石を出して、靴を履くと、今度は左の靴を脱ぐ。風があって傘が回る。首で飛ばないように押さえて…
 左の靴の裏を見ると、びっしりと小石が模様に詰まっている。…いや?小石ではないな?堅い石のような…

卵!?

 突然その卵が割れ始め、黒い昆虫の複眼が光る。無数の虫がぞわぞわぞわと這い出して、靴を持った手から、私の顔へと登ってくる。振り払おうにも腕が動かない。

 傘が風で飛ばされた。

 私の顔が雨に打たれる。虫は私の口へ鼻へと…声が出ない、助けてくれ、と、叫ぼうとして、じゃりっ、と、虫を噛み潰した…。

 気がつくと私は傘を持って立っていた。家はまだ遠い。しのつく雨の中、むっとした暑さの夕暮れに、私は砂利道を行かねばならぬ。歩き始めると、左の足に、小石が入ってしまったらしい、右の靴は…

 気がつくと私は傘をもって立っていた。ふと見ると、道の向かいの軒下に、サルのように腰が曲がった老婆がいて、こちらを見ている。その目玉が異様に大きい、と、カメレオンのように逆方向に、目玉をぐりぐり回しながら、怪鳥のように、けけけ、と、笑う。

 教えてくれ、これはいつ終わる?老婆は答える。

 終わらないよ。

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