昔の話。

通勤電車での帰り道、
比較的すいていたその車両にバッタリ教え子が乗ってきた。
教え子と言っても、その年度は担任ではなかったし教科担当でもなかった。

その子（高３女子）は、「あ、先生～！」
と、私の隣にびたっとくっついて座り
「わからないところあるの、教えて！」

そう、定期テスト直前だった。

私「英語を私に聞くな！」
生徒「国語も！国語もわからないところあるの！」
私「学校で担当の先生に聞けよ～電車の中で聞くなよ～」

そしたら

生徒「もう！先生ったら、ワタシのこと好きなくせに！」

（へ？）

いや、嫌いじゃないけどさ、そこまで言われる覚えは…

生徒が降りて、記憶をさかのぼる。
以前、noteに書いたけど、その当時は困難校に勤務していて

「この学校の生徒は褒められたり他人に認められたりした経験が驚くほど少ない。成功体験が乏しい。だから、積極的に褒めましょう。」

って学年の方針だったから、
ガチガチに真面目で教師なりたての私は、ガチマジで実践していて、
多用していたのが
「すごいなぁ」と
「アンタはいい子だねぇ」だった。
ちょっとでも良い点があったら言ってたので、いちいち覚えてないぞ？
うーんうーん…

そういや、高校二年の修学旅行、茶髪を染めてこいと言われたその女子は
「漆黒」
に染めてきて、クラスでからかわれてたな、その時担任だったけど何か言ったっけな？
まぁ、そういう所のある生徒だったから、生徒指導部には印象悪かったみたい。

その修学旅行のとき、これも以前noteに書いたけど、
「女子部屋にタバコの吸い殻があった事件」
の部屋の生徒のひとりだわ。
あれは、清掃係がやったことだと決着ついた。
そのとき、「あの子は（タバコを）吸ってますよ」って指導部に言われて
私「そんなことないですよー」って言って、馬鹿かこいつって目で見られたっけ。それは、生徒の前でじゃないぞ？

ああ、その年の冬に定期テストを仲良しと二人で欠席して、
午後登校してきて、
生徒「ちがうの！徹夜で勉強しようねってこたつで勉強してたら寝ちゃったの！」
私「追試のお願いに行ってこーい」
生徒「先生～～～ついてきて～～～」
ってことがあった。
あの時も指導部には「自信がない科目を追試狙いで欠席する生徒もいますよ」って言われたっけ。
私「そんな作戦を考えるタイプじゃないですよ」っつったら、また馬鹿かこいつって目で見られたけど、それも生徒の前でじゃないぞ？

全く、覚えがない。

ただ、特定の教師ウケがすこぶる悪いので、
今まで先生には叱られてばかりだったのかもな。
私は彼女に何かで「いい子だね」って言ったかも。
こっちはみんなに言ってるんだが。

彼女は成績がともかく悪かった。
それでも友だちと勉強しようとして結果はアレだったけど。
やる気だけは出したんだな。
三年生では、電車の中でも勉強しようと。（迷惑

赤点はとらなくなってたな。
進路は「家業を手伝う（商店）」だった。

実はその学年、就職氷河期だから進学できる生徒は進学させようって共通目的もあったし、
一年生から英国数が「一本釣り漁法」って教員は言ってたけど、勉強頑張れる生徒は放課後個人指導してたり、
問題行動で生徒指導に入った生徒がいたら「話をしに行きましょう」って、方針もあったりして、

大体全体的に生徒の承認欲求にこたえてたような気がする。

だから、君だけが好きなわけじゃなかったんだよ。

まんべんなく「認められてる感」があった結果、
どういうことが起きたか。

勤務校は例年四年制大学進学者が一桁。（当時）
その学年は20人を超えた。

私はちょっとデリカシーが足りないもんだから、
推薦入試の結果が来たときその足で教室に行き
「受かったぞ！合格！」
って言っちゃったんだよな。

したら、他の生徒が「おめでとう～」ってみんなで拍手した。

大学受験生は数人の混合クラスで、合格した生徒はクラス内の友達少ないタイプだったけど。

自分が認められている人間は、他人を認められる。

それでもいじめがあったり退学者が出たり
指の間をこぼれ落ちてく無力感。
私は退職しているけど、
本当に大変な仕事だよな、教員。