ドリームプランと女子テニス

わたしは長らく女子テニスが好きで見ていたが、丁度見なくなった頃が、この物語の主役の娘たちであるビーナス、セリーナのウィリアムズ姉妹が登場してからである。彼女らのサービスは男子並みに速かった。その結果、`プレーがスピード化し、私が好きだった女子テニスの醍醐味、かけひきの要素が減ってしまったからだ。が、今は少しだけ後悔している。なぜなら、この映画を見て、彼女らの生い立ちとその実績、そしてその実績を生むきっかけになった父親の存在を知ったからだ。

その父親(ウィル・スミスが演じる)は、なかなかの毒親だったようだ。雨の日も風の日も練習に連れだし、そのスパルタぶりは隣家に訴えられるレベル。コーチを雇えばあれこれと口出しして嫌われ…等々。しかも現在、この親子の関係は断絶しているらしい。

が、しかし、この毒父親が主人公である物語(原題はKING RICHARD)の映画化には、姉妹がプロデューサーとして名を連ねている。これはどういうことか。邦題の通り、夢の計画を立て、まわりの迷惑かえりみず、ひたすら夢へ向かって邁進。その結果が彼女らをチャンピオンにした。この映画はその事実を認め、父親への恕し、あるいは感謝を与えるものなのだろう。それが、基本的に裕福な白人家庭のスポーツであるテニス界に、マイノリティとして挑む姿と合わせて描かれる。

映画では姉妹のうち、ビーナスがアランチャ=サンチェス=ビカーリオ(なんとなく名前覚えてる)に挑むところがクライマックスになっており、この試合がまたテニスの要素、ここが見たいという勘所をうまく捉えていて、テニス映画としても秀逸(たぶん、バトル・オブ・ザ・セクシーズを越えた)である。しかしこれを見るとテニスにとって精神的要素がいかに大きいかが分かる。だからテニスは面白い。ちなみにもっと、その後、セリーナの活躍まではやらなかった。(エンドロールでふれるのみ)が、その業績を見て、これはあらためて2人のプレーを見てみたいと思い、ネットで検索した。すると両者が対戦した2018年全米オープンの試合が見つかった。




なるほど、これは両者の特徴が出ていて面白い。ビーナスもうまいが、セリーナの強さがやはり目立つ。これを見ているうちに私のアイドル(同じサウスポー)のナブラチロワのゲームを検索していたところ、グラフとの対戦を発見。1991年全米オープン準決勝。この試合は私は覚えている。これは後世に語り継がれる名ゲームだと思う。確かその頃は既にグラフの全盛期で、ナブラチロワはいいベテランだったはずだ。が、この試合、1セットめも2セットめもタイブレークの大接戦となる。力のグラフに対し、ナブラチロワは頭脳と技で対抗したのだ。長いがぜひ最後まで見ることをおすすめする。


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