劇場版 センキョナンデス(入門編)

本日、『劇場版センキョナンデス』を鑑賞してきたので、その感想を書くのだが、それを書こうとしている私は、この映画の母体になったYoutube番組『ヒルカラナンデス(仮)』の大ファン(「ヒルマニア」と呼ばれる)である。好きすぎて、クラファンrというか、一口スポンサーまでやっているほどだ。そんなファンから見て、この映画は何も知らない人よりも、ファンの方が楽しめる作品である。それは残念ながらそうだ。映画前の配信で出たネタや、経緯を知っている方が楽しめるし笑えるし、実際そのような仕掛け、ファンサービスも満載。だが、そんなことばかり語っていては、いつまでも新規顧客を開拓できず、映画を真の成功に導けない。それでは少額なりと投資をした我々も不本意。なので、この記事では、まったくの予備知識なしの人に、この映画の面白さを伝えるということにチャレンジしてみたいと思う。ファン向けの感想はまた別記事で。

この映画には選挙、具体的には21年の衆院選と、22年の参院選を取材した模様が収められている。ただの選挙の取材が面白いのか?ダースレイダー氏とプチ鹿島氏のコンビが我々に気付かせてくれたのは「選挙は祭りである」「祭りである選挙に参加することは、たとえ自分の選挙区でなくても楽しい」の2点である。それはこの映画を鑑賞することで、確実に感じられると思う。何しろ、選挙に出るキャラクターが面白い。最初の衆院選の香川1区では、自民党で地元新聞のオーナー一族で初代デジタル大臣vs、立憲でパーマ屋の息子で、選挙区では負け続けている候補者の対立に、第三者である維新の候補者が乱入するという構図。ね、面白いでしょ?

更に、取材していると様々な「違和感」に直面する。最初はなんだろうと思っているが、進むうちになんだか可笑しくなってくる。当時の取材直後の配信ではちゃんと解説されていたのだが、今回そのような丁寧な解説はないので、ここはやや上級向けかもしれない。

もちろん、盛り上がるとか。、笑えるだけではない。次の参院選の時に必然的にその日はやってくる。2022年7月8日。安倍元首相銃撃の日。選挙戦まっただ中で、候補者は、そして取材した二人は何を感じたか-実はここは、以前の配信でもあまり語られなかった部分であり、これを克明に記録した部分は、それだけで十分価値のあるものだろう。特に辻元さんが、死亡の報を受けた時の様子、周囲の様子は見ものだ。映画ではかなりの時間をこの瞬間に割いている。

で、少々ネタバレになるが翌日は選挙運動の最終日であるので、また笑える取材に二人は戻っていく。だから7月8日は意図したものではないが、丁度映画のシナリオ論における途中の「ダレ場」になっており、一本調子ではなくなっている。偶然起きたことだが、構成の際にはそこを当然念頭に置いていたに違いない。

ということで、単なる取材をつなげただけに見えて、実は計算し尽くされた見事な構成の作品だと思う。初心者の人は、そこをまず楽しんで、その後に、YouTubeの『ヒルカラナンデス』を一通り観て、バックグラウンドの知識を得た上で、もう一度映画を観るとより楽しめることうけあい。これであなたも立派なヒルマニア(笑)である。

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