絵の具のようなものかと思った

ある日、唐突に好きな色を見つけた。

自分の持つ色と、混ぜたらきっときれいな色になると思った。

最初は、パレットの両端に。間には色とりどりの絵の具があって、混ざったり、離れたりしていて、自分は自分の色のまま、向こう端まで、あのきれいな色のあるところまで、いけるのかしらと不安になったりもした。

すこしずつだけど、近づいて、できる限り他の色に染まらないまま、ふたつの色が近づいて、季節も変わって世界の色も変わっていった。

最初は力いっぱい混ぜてしまった。ふたつの絵の具はあっという間に沸騰して蒸発して、乾いたなにかの欠片のようにひび割れてしまったけれど、今はもうそんなふうに、思いっきりかき混ぜるような熱もなく、ただ一緒に同じパレットのうえで寄り添った。

まるで自然に溶け合うように。最初からほんとは、焦ってかき混ぜる必要なんてなかったって、後になって気がついて、結局はどうしたって、自分の色と混ざってきれいな色なんて、ひとつしか見つからないんだってことを知って。

そうして今はもう、自分の色も、あなたの色も、もともとどんな色だったのかなんて思い出せない。

今はただ、ふたり。同じ色の絵の具として生きてる。

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