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「内海放出は巨人崩壊の決定打」と言える3つの根拠

球界に衝撃が走りました。巨人・内海哲也投手がFAの人的補償で西武に移籍することになりました。

ファンの間では、そもそもFAで炭谷銀仁朗捕手を獲得すること自体に疑問が出ていたので、「内海と炭谷のトレードだとしても、西武が得する」とすら言われています。長年巨人を支え、人気選手でもある元エースの放出は、巨人にとっても大きな痛手となるはずです。

もちろん有望な若手を持っていかれることも辛いのですが、今回内海という大きな柱を失ったことは、チームを崩壊させる決定打になると私は思います。元番記者の立場から、その理由について持論を述べます。

①精神的支柱の離脱

ベテランの内海がチームの精神的支柱であることはよく知られています。でも内海の場合、そんじょそこらの精神的支柱とはわけが違うのです。

つい2、3年前まで、巨人には「内海組」というものがありました。山口鉄也や今村信貴といった左腕を中心に、オフにグアムで自主トレを張っていたメンバーです。参加者は毎年変わるのですが、宮國椋丞、大竹寛、小山雄輝、(笠原将生)ら右腕も名を連ねる、投手陣最大の派閥でした。

プロの自主トレって、もちろん個人差はあるのですが、ぶっちゃけ午前中だけちょこっと動いて終わりというケースがほとんどです。野手の最大派閥だった「阿部組」なんてひどいものでした。。

しかし、内海組の自主トレは朝から晩まで、徹底的に鍛えられます。そのハードさから一部選手には敬遠されていましたが、個人トレーナーによる走り込みを中心としたメニューは見ていて吐き気がするほどでした。

しかも、自主トレ期間中の費用はすべて内海持ち。それでも若手を育てたい、チームを強くしたいという一心で、大所帯でのグアム自主トレは毎年オフの恒例行事となっていました。

なぜ内海はそんなに人望があったのか?実績やリーダーシップ、明るい性格など理由を挙げればキリはありませんが、一番は「誰よりも努力する選手だから」だと思います。

一軍にいようが二軍にいようが、誰よりも早く球場入りするのは絶対に内海です。本当、恐ろしいくらいに早いので、内海に単独で取材するために始発レベルの電車に乗らなきゃいけないこともありました。東京ドームで18時開始のナイターだと、大半の選手は11時~12時半頃に球場入りするのですが、内海だけ9時台。入念にケアをしてからアーリーワーク、全体練習に臨んでいるのです。

その姿勢を見ているから、どんなに内海が不調でも、彼を悪く言う者は選手、首脳陣、スタッフ、報道陣、誰一人としていませんでした。最近は菅野智之が絶対的エースとして君臨し、オフには若手を連れて自主トレに行くようになりましたが、菅野は良くも悪くも背中で引っ張るタイプ。丁寧にアドバイスし、ムード作りもうまい兄貴分的存在の内海とはタイプが違います。

そんな誰しもが認めるリーダーが不在の投手陣は、間違いなく崩壊します。

②他の生え抜き選手が抱く球団への不信感

内海といえば、2000年ドラフトでオリックスに一位指名されながらも断って、社会人を経て巨人入りしたという経緯があります。もちろん巨人一筋。そんな選手が今回、プロテクトされなかったことの意味は、他の選手にとっても大きな衝撃だったに違いありません。

たしかに今季5勝止まりだった内海は、来季ローテ入りできるかどうかのボーダーです。戦力的には28人枠から漏れても不思議ではありません。しかし、これまで巨人一筋で生きてきたベテランを球団が守らなかったことは、他の選手にとっても「明日は我が身」。球団への不信感は一気に高まったに違いありません。

これは現役選手だけでなく、アマチュアや他球団の選手に関しても同様です。今回内海を放出したことで、「巨人は功労者を守らない球団だ」という認識が確実に広まった。この意味は限りなく大きいと思います。

アマチュア選手がみんながみんな、口を揃えて「巨人に行きたい」という時代はとっくに終わっています。こういう球団への悪いイメージはかなりの長期間ついて回るので、近い将来、ドラフト有力選手による「巨人はお断り」というキャンペーンが張られても文句は言えないでしょう。

③首脳陣とのパイプ役流出

今年の巨人は原新体制となり、コーチ陣も一新されました。一軍投手コーチは昨年までの斎藤、豊田両氏が去り、宮本、水野両氏が抜擢されました。

新コーチ陣の元では、往々にして選手とのコミュニケーションが課題となります。これまでと指導方針がガラッと変わりますし、コーチはまず自分の意図を選手に理解してもらうことから始めなければなりません。プロ野球選手は、ルーキーですら自分の確固たる調整法や練習法を持っていますから、頭ごなしにコーチからアドバイスをされても受け入れられません。選手と首脳陣が蜜に連携を取ることができないと、組織として崩壊する恐れもあります。

こういうときに頼りになるのが、パイプ役になるベテラン選手なのです。ベテランであれば、長年チームに存在する「しきたり」のようなものを把握していますし、選手を代表してコーチに意見することができます。コーチにとっても、まず影響力のあるベテラン選手との信頼関係を構築しておけば、そこから中堅、若手へと波及効果が期待できます。

その役割を果たせる人間が、内海以外にいるのでしょうか?来年37歳の内海が抜けると、生え抜きの投手では来年31歳の澤村拓一が最年長(上原除く)。パイプ役として実績も経験も圧倒的に足りないのは明らかです。

申し訳ないけれど、水野、宮本両コーチは現場から離れていた期間が長く、若手にとってはもはや「バラエティの人」。選手と意思疎通を図り、信頼関係を構築するには時間がかかるのは目に見えています。

その環境にもかかわらず、内海を残さなかった。これは予想ですが、2月の春季キャンプから投手陣とコーチの間に軋轢が生まれることになるのではないでしょうか。

内海放出は巨人崩壊の決定打

今回の内海放出が、巨人、西武双方にどう転ぶかは全くわかりません。もしかしたら炭谷が巨人で大活躍し、救世主として崇められる可能性だってゼロではありません。

でも、もし仮に炭谷がベストナイン級の活躍を見せたとしても、内海は放出すべきではなかった。たとえ一軍登板ゼロに終わったとしても、本人が現役でいる以上は、チームに残しておくべきだった。その判断を球団が出来なかったという意味で、巨人は間違いなく崩壊の一途をたどると断言できます。それくらい、内海哲也の存在は大きかったのです。

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