「ごっこ」

我が家には「ごっこ」という遊びがある。いわゆる役割遊びの一種なのだが、娘は幼稚園に入ったくらいから、これにすこぶる熱心で、週に何回か、寝る前の少なくない時間を費やしている。

彼女はある時は鳥学校の先生(鳥類が対象の仮想の学校です)、ある時はクーポンをたくさん持っている人(なんでも半額になったりする)、またある時は家を新築した人、宝石商… などとして立ち振る舞う。

小学校に入ったころからディテールにもかなりのこだわりをみせはじめ、いつの間にやら小道具(鳥教員免許証とか)を準備していたりする、という発展があり、驚いた。

現実で「やりたいができなかったこと」などを、この「ごっこ」を通して仮想的に実現して代償しているというような印象があるが、発達心理学などに関しては素人なのでなんともわからない。

最近は小学校が舞台の「ごっこ」が多いような気がしているが、空想の世界において、彼女は現実より大分自由にふるまっており、それによりかなりの充実感を得て就寝しているように思われる。

妻は断じてやらない。
だから、100%私がこの「ごっこ」に付き合うことになるのだが、娘の指示のもと、複雑なシナリオに沿ってガヤをやったり、他の出演者(ぬいぐるみとかです)を動かしたりするのは大変忙しい。

また、要求水準は年々高くなってきている。反応に工夫が足りないと叱責されることもあれば、彼女の意に沿わないアドリブを入れてしまい、やり直しを命じられることも多々あり、悔しい思いをすることも一度や二度ではなかった。

シナリオは彼女のインスピレーションでかなり流動的な展開をみせることが多く、ついていくのは実に容易ではない。
世のゴッカー(「ごっこ」をする人のこと)の皆さんも同じ悩みを抱えているのではなかろうか。

私の(彼女の)「ごっこ」歴は4-5年といったところだが、さて、あとどれくらいこれは続くのだろうか。
中高生になって「ごっこ」に付き合わされることはないような気がするから、あとしばらくの間なのだろうと予想しているが。

いつか娘が「ごっこ」から離れ、そして年頃になって生意気言ってきたら、
「おいおい、そんなこと言って、今日は「ごっこ」はしなくてイイのかい?」と反撃してやろうとは思っている。「まじうぜえ」と言われる可能性が高いように思うが、今からその日が楽しみである。

(2023年9月5日に投稿)

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