ウサギとカメ

北海道にゆかりの経済人、石井誠二さん(「つぼ八」創業者)は生前、彼を慕う若い経営者にこう語りかけたという。
「カメがウサギに勝てたのはなぜだと思う?」

石井理論だとこうだ。
「両者の視点が違ったから。ウサギは相手を見ていたが、カメはゴールを見ていた。だからブレずに前進し続け、最後に勝った。経営も人生も、全て一緒だ… 」

青森に住んでいたとき、浪打銀座のつぼ八に大分お世話になった。そして、石井さんが伝えたかったのは「目標設定とぶれない行動の大切さ」だろう。だから、この話を全否定するつもりはない。しかし、ウサギとカメの事例を改めて分析したとき、見えてくるのは全く違う教訓だ。

ウサギはカメを「のろい」自分を「はやい」と、表層的、観念的に捉えている。一方、カメはウサギを「瞬発力はあるが持久力に欠ける」自らを「長時間持続して運動する能力に秀でている」と詳細かつ具体的に分析している。

事実、ウサギはスタートダッシュを決めたが、ゴール到達前に疲労困憊し、一時休養(睡眠)せざるを得なかった。対してカメは、ほとんど休憩することなくゴールに到達している。(たぶん)

思い出して頂きたいのだが、ゴールの設定をしたのはカメだ。カメは彼我の能力を分析した結果「むこうのおやまのふもとまで」(具体的な距離は不明だが長距離だと推定される)と設定することによって、ウサギを逆転することが可能、少なくとも優位に戦えるとみて、このような提案をしたのではないか。

ウサギは観念的に「自分は速い、カメは遅い」と捉え、それ以上がない。だから条件に対し互いが発揮可能なパフォーマンスを想定しようとしない。また、この場合ゴールやルールは双方の合意に基づき決定されるにも関わらず、カメの提案を受け入れるだけで自らの意見を反映させるという視点が全くない。

これらが勝負の分かれ目となった。カメの的確な分析と戦略がウサギを上回ったのだ。カメの勝利は奇跡でも幸運でもなく必然である。(もちろん、計画を着実に成し遂げるカメの実行力がもたらした必然である)

仮にウサギにアドバイスを求められれば、彼我の能力の本質を見極めたうえで「あちらのおやまのふもとまで」の競争を提案するべきだったのではなかったか?と助言したい。(短い距離での勝負)

したがって、ウサギとカメの実例から我々が得るべき教訓は以下のものとなろう。(実話でしたっけ?)

1)ルールやゴールを設定する側が有利さを得られる。可能であれば介入すべきである。
2)自分と相手の強み弱みを(観念的ではなく)具体的に検討し、戦略に反映させる必要がある。

以上だ。

(2023年3月17日にツイート)

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