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山口達也事件の被害者を叩くべきではない理由

山口達也の事件で、被害者の女子高生を責める声がある。

じゃ、その女子高生は、電話での呼び出しをどう断れば良かったというのだろうか。

「もう夜だし」と言っても、今度は明るいうちに電話してきて「夜じゃなければいいんだろ?」と言われそうだ。

「男の人の家に行くのはちょっと・・」と言おうものなら、「オレが何かするとでも思ってんのかよーッ!?フザけんな!」などとキレられそうだ。

あの番組は観たことないが、講師と生徒みたいな設定なんだろ?
だったら尚更、異性という理由では断りにくそうだ。
それどころか、警戒するのは失礼とすら考えるだろう。

だからその女子高生は友人も連れて行った。
精一杯の防御だったのだと思う。

とにかく断りにくいケースだ。
そこを察してあげてほしい。

私にもちょっと似たような経験がある。

私の場合、本当に講師と生徒の関係だった。
私が大学生で、相手は大学講師。

ある日、その男性講師から「今日、飲み会するから来ない? Aさんも誘ってみて」との電話があった。

Aちゃんは、私の大学の友人。
彼女に電話してみると、「行かない」とのこと。
多分、その講師のことが好きじゃなかった。

・・・実は私も好きじゃなかった。
友人が行かないなら尚更行きたくない。

友人が行けないことを伝えるついでに、自分も断ろうと思った。
電話をかけると、相手は「いーよ、いーよ、じゃ、一人で来て。待ち合わせ場所はさぁ・・」と話を進め、私は何も言い出すことができなかった。

ちょうど数週間前に、その講師主催の飲み会があり、私も含め大勢の学生が参加していた。

それを思い出し、「あれだけ大勢いれば、私一人いなくてもわからないかも」と思った私は、待ち合わせ場所に行かないという選択をした。

待ち合わせ時間が過ぎて、講師から電話があった。「何で来ないの?」

私は「連絡もせずにすみません。ちょっと急用で行けなくなったんです。今日は皆さんで楽しんで来てください」と伝えた。

するとその講師は恐ろしい声で、
一人でどう楽しめって言うんだよッ!?

・・・え?一人?
私たち、1対1で会うことになってたんですか!?・・・・・絶対イヤだ!

「本当に申し訳ありません。本当に急用で」と電話を切ってしまった。

その後、何度も鳴り響く電話。
私はその電話に出られないでいた。

・・・そして数時間後、恐る恐る電話に出た。
「今、家に戻ってきたよ。・・僕のことがイヤだったんだろ?」と講師。
「違います! 本当に急用で・・さっきその用事が終わったところで」と私。
「ホント? じゃ、また誘っていいの?」
「・・・」

しかし講師もそこまでバカじゃなかったようで、私を誘ってくることはなかった。その講師の授業の単位も無事だった。認めてもらえないのではないかと、ものすごく心配だった。

ひょっとしたら今回の被害者も、断ったら番組をクビになるかもしれない、との不安があったんじゃなかろうか。

私もあの時、渋々待ち合わせ場所に向かって、「車に乗って」などと言われて自宅に連れて行かれ、この被害者と同じような目に遭ったら、周囲の人から「お前が悪い」と責め立てられたのだろうか・・・

それを考えるとゾッとする。

普段つかないウソをつき、普段やらない「すっぽかし」をし、非常に無様な切り抜け方をした私は、今回被害に遭った彼女とは「紙一重」だったんじゃないか・・・

それは、私も危険な目に遭ったかもしれない、という意味ではなく、迷いの中で究極の選択を迫られている女性は多い、と言いたいのである。

今回の件も「男性宅にホイホイと出向いた」などと表層的にとらえるのではなく、そこに大いなる逡巡や葛藤が存在していたかもしれない点に目を向けるべきなのだ。

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