知らないと損をする?商標登録について完全解説
ご自身のサービスや商品・作品に名称やマークを付けられている方は多いと思います。けれどもそれを商標登録していますか?
この記事ではとっつきにくそうなイメージも多い商標とその登録についてご紹介します。
【10秒で分かる記事のまとめ】
商標とはネーミングやロゴのこと
商標登録には様々なステップがあり、費用もかかる
商標を登録していないことで、思わぬトラブルに巻き込まれることもある
商標・商標登録の概要
まずは商標と商標登録の概要についてご説明いたします。
商標とはネーミングやロゴのこと
商標とは事業者が、自社の扱う商品やサービスを他社のものと区別するために使用するもので、具体的には「ネーミング」や「ロゴ」を指します。
分かりやすい例とすれば、任天堂の”Nintendo Switch”や”Wii”、”ニンテンドー3DS”などは任天堂の商標です。
*Nintendo Switch およびNintendo Switchのロゴ、ニンテンドー3DS およびニンテンドー3DSのロゴ、Wii U およびWii Uのロゴは、任天堂の商標です。
商標登録とは特許庁に出願し、商標を登録すること
商標登録とは、商品やサービスにつけるネーミングやロゴを特許庁に登録することをいいます。
登録することで、「商標権」を得ることができます。「商標権」とは、特定の商品やサービスとの関連性を示すための文字や図形、記号などの商標を独占的に使用する権利をいいます。
例えば、ヤマト運輸株式会社のクロネコが使われているマークがありますが、このマークも商標登録がされています。このため、ヤマト運輸株式会社はこのマークを独占的に使用できます。
商標登録の流れ
商標登録は以下の流れで行えます。
調査
出願
審査
登録
それぞれについて、見ていきましょう。
1. 調査
商標の登録を出願する前には、「似たような商標が登録されていないか」や「漢字表記にするかローマ字表記にするか」や「特徴があるか」などを調査します。
登録したいネーミングやロゴがすでに登録されているかどうかは特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)から簡単に検索することができます。
2. 出願
調査で類似した商標がないことが分かったら、出願を行います。所定の様式が準備されており、先ほどのJ-PlatPatからダウンロードします。
出願は書類でもインターネット経由でも可能です。
また、出願の際には収入印紙ではなく「特許印紙」が必要になるため注意が必要です。
3. 審査
出願が完了すると、内容が審査されます。
特許庁の審査官が「方式審査」および「実体審査」を行います。
「方式審査」は、出願書類の記載漏れがないか、印紙がきちんとあるか、などを審査しています。
「実体審査」は、類似した商標がないか、出願された商標に特徴はあるか、などの法律の目的に照らして商標にすべき価値があるかどうか、また出願した人が権利を付与される資格を有するかどうかという観点から審査をしています。
4. 登録
無事審査を通過すると、登録することができるようになります。
審査の合格通知が届いたら、30日以内に登録料を特許庁に納付する必要があります。納付後約1カ月程度で登録証が到着し、そこで正式に商標登録が完了します。
商標登録にかかる費用
商標登録にかかる費用は大きく3つに分けることができます。
登録出願料
設定登録料
更新登録料
それぞれについて、見ていきましょう。
1. 登録出願料
登録出願料とは出願にかかる印紙代です。特許印紙代は権利を求める商標の区分の数によって異なります。
特許法等関係手数料令で「1件につき3,400円に1の区分につき8,600円を加えた額」と定められています。つまり、1区分なら3,400+8,600=12,000円、2区分なら3,400+8,600×2=20,600円となります。
これに加えて、弁理士などに申請を依頼する場合には別途費用がかかります。
2. 設定登録料
先ほどご説明したとおり、無事に審査を通過し通知を受け取った場合、そこから30日以内に登録料を納付する必要がありますが、これが「設定登録料」と言われるものです。
設定登録料は1区分であれば32,900円、2区分であれば65,800円と定められています。商標の存続期間は設定登録の日から10年間をもって終了するため、この設定登録料は10年分の金額となります。
また、商標法は10年間も権利の必要がない、という商標権者のために設定手数料の分納制度もあります。分納制度を利用して10年間商標を存続させると総額は割高にはなってしまいますが、こういった支払い方法もあるため、覚えておくといいでしょう。
そして登録のときと同様に弁理士などに申請を依頼する場合はその費用がかかってくるため、確認が必要です。
3. 更新登録料
商標権は存続期間が満了しても更新できます。実質、商標権は半永久権とも言えるでしょう。
更新登録料も商標法という法律の中に規定があって43,600円に区分の数を乗じて得た額を納付します。1区分であれば43,600円、2区分であれば87,200円です。こちらは10年分を一括して納付する場合の金額です。
また、設定登録料と同様に、分納制度は更新登録にもあります。
商標登録のメリット、デメリット
商標登録はメリットばかりではありません。ここでは、メリット、デメリットについて、見ていきましょう。
商標登録のメリット
商標登録のメリットは以下のようなものがあります。
登録したネーミングやマークを独占できる
更新すれば商標を守れる
商標の譲渡などで利益を得ることができる
信頼度を向上させられる
ブランディング力を高められる
そのため、クリエイターの方の場合、youtubeのチャンネル名や芸名・グループ名などを登録しておくとこのようなメリットを受けることが可能です。グッズを販売する場合はそのグッズも商標登録しておけば安心して販売できます。
商標登録のデメリット
商標登録はメリットばかりではありません。
これまでご説明したとおり、登録には色々な費用がかかります。弁理士などに依頼をするとその費用がさらに上乗せされますし、ご自身で申請するとなると時間と手間がかかってきます。
そしてようやく登録が終わっても、長い間継続して使用しないと取り消される可能性もあります。ビジネスで実際に使っていないものは知的財産としての価値がなく、保護対象に当たらないため、使用実態のないものは取り消されることになります。
その商標を使いたい人が現れると、取り消し請求をされる可能性もあるため、ここも気をつけたい点です。
商標登録をしていなかったために発生した事例
商標登録にはメリットとデメリットがあることをご説明しました。
次に、商標登録をしていなかったために起きてしまった事例をご紹介します。
株式会社モンシュシュ商標権侵害事例
株式会社モンシュシュは堂島ロールで有名なケーキ屋さんでした。販売しているケーキのパッケージに会社名である「モンシュシュ」を表示していましたが、実は「モンシュシュ」はすでに他社が商標として登録していました。
そのため、株式会社モンシュシュは商標権侵害とされ、約5,140万円の損害賠償を命じられた上、店名や社名を「モンシェール」に変更することを余儀なくされました。
「シルバーヴィラ揖保川」商標権侵害事例
ある医療法人では、平成9年から兵庫県で「シルバーヴィラ揖保川」という介護施設を運営していました。
けれどもこの医療法人が知らないうちに、東京の会社が「シルバーヴィラ」の商標を取得していて、商標権侵害として訴訟を起こされてしまいました。
医療法人は「シルバーヴィラ揖保川」の名称を商標登録していなかったために敗訴し、介護施設の名称変更と約600万円の損害賠償の支払いを命じられてしまいました。
必要な商標は登録し、ご自身の権利を守りましょう
商標登録はお金も手間もかかりますが、ご自身の商標を守るためには有用な手段です。
先ほどご紹介した通り、商標を登録していないために思わぬトラブルに巻き込まれる可能性もあり、登録しておくことでそれを回避できる場合もあります。
一方で商標登録には費用負担があったり、せっかく商標登録しても取り消される場合もあったり、とデメリットもあります。
メリットデメリットを加味し、必要な商標は登録して創作活動・事業活動を行ってください。
YouTube「駆け込み寺VTuberまっちゃんのBansouチャンネル!!」でも商標登録についてのあれこれをゆる~く、分かりやすく解説しています。
ぜひ、ご視聴ください。
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