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思い出の料理

喫茶店『チロル』

長崎市浜町アーケードは南北に走り、並行して走る道が並んでいる。
アーケードの東外れ近くの横道を入るとその角に
チロルという喫茶店があった。
店にはそれまでに、一度だけ入ったことがあったが、
そこに二回目に入った時のことが思い出となっている。

そして、夫婦の思い出の料理は、グラタン。
4,5センチの厚切り食パンが器になっていた。
このグラタンを食べながら妻から長男の懐妊を告げられた。
42年前のことだ。

その日のうちに両方の親に報告し、
物事は加速度的に進行して行った。

グラタン

グラタンが一般家庭の食卓に上ることが珍しい時代のことだ。
今でもグラタンを食べるたびに、チロルの風情を思い出す。
ところが肝心の話の内容は、よく覚えていない。
その日のグラタンは二度目だったけれど、
どんなグラタンかも覚えていない。
真っ白なホワイトソースの記憶しかない。
いっそのこと『鴨川食堂』にお願いしてみようか。

思い出のグラタンを食べたとしても、
踏ん切りをつけたいこととか、
誰かへの想いとかは、ない。
まだ、二人とも元気なうちに食べながら話そう。
これまでの42年間について。







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