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超短編恋愛小説

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2014年6月の記事一覧

プールサイドにて

プールサイドのデッキチェアに寝転がってSF小説を読んでいると、隣のデッキチェアに黒髪ボブの東洋系の女性が座った。

僕は彼女が持っている本をちらりと見た。

日本語だ。

彼女は日本人なんだ。

僕は8年ぶりの日本語を使ってみたいなと思い、頭の中で話しかけるところを想像してみた。

「日本の方ですか? 旅行中ですか? はい。私は学生時代、東京で勉強していました。杉並にすんでいました。ご存知ですか?

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どっちが好き?

初めて彼女とベッドに潜り込んだ夜。
 
いろんなことが終わり。
 
彼女が突然カーテンを開けて夜空に浮かぶ月を眺めながらこんなことを僕に質問した。
 
「ねえ、『明日は遠足』というのと『明日から夏休み』というのとどっちが好き?」
 
僕は彼女の髪の毛を触りながらしばらく考えてみた。
 
「明日が遠足」のあのドキドキした気持ち。
 
「明日から夏休み」のあの解放された感じ。
 
夏休みは小さい僕にと

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知り合う以前の二人に戻る

「ねえ。私が今から合図を送ると私達は知り合う以前の二人に戻るの。私はあなたのことをまだ知らない。あなたも私のことをまだ知らない。そんな出会う前の二人の状況に戻れるのよ。そしたら、ほらここは表参道の真ん中だから私達は別に何の違和感もなく『あれ、この人知ってる人だっけ?』とかなんとか思いながらすれ違うことが出来るわ」

「わかった。君の合図で全てが5年前の状況に戻るんだね。でもさ。でも、もしかしてさ、

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