夏休みの終わり

いつも食べている渋そばで「ねばねばそば」という夏限定のメニューがあるんですね。

トロロとメカブとオクラがのっている冷やし蕎麦で、それに生卵を加えるともうとにかく最高のハーモニーで、妻と「この夏は渋そばのねばねばそばに決まり」って盛り上がっていたんです。

それが先日、妻がねばねばそばを頼んだところ、「そのメニューもう終わっちゃったんですよ」って言われて、僕たちとしては「夏は8月いっぱいはやるだろう」と思っていたのでもう落ち込んでしまいました。

で、妻が「なんか夏休みの間に何も言わないで転校していったクラスメイトみたい」って言ったんです。

なるほど。うまいこと言いますよね。

そういえば「夏休みの間に何も言わないで転校してしまったクラスメイト」っていましたよね。みんなが真っ黒になって「宿題やった?」とか「旅行どこにいった?」とかって話しているときに、「あれ、あいついない」とか言って、「ああ、佐々木くん? 転校したらしいよ」とか言われて、「ええ? 佐々木、何も言わないで転校しちゃったの? お別れ会もしてないじゃん」って感じです。すごく寂しいですよね。

で、想像してみたのですが、「冬休みが終わった後に転校したって気づく」のより、「春休みが終わった後に転校したって気づく」のより、「夏休みが終わった後に転校したって気づく」方が、より寂しいですよね。

それはたぶん「夏休みの終わり」に「彼の不在」に気づくからだと思うんです。

 ※

夏休みって永遠に休日が続くようで、小さい頃はすごく楽しいですが、何回か夏休みを経験していくうちに「ああ、夏休みってずっと続くようだけど、実は意外とあっという間に終わりがきて、そしてあの学校に通う日々にいつかは戻らなきゃいけないんだなあ」っていうのを学習しますよね。

今はプールだ、海だ、花火だ、お祭りだって騒いでいるけど、これもいつかは終わるんだなあって、ちょっとづつ学んでいきます。

こういう「幸せな状態っていつまでも続くわけではない」っていうのって、大人になるまでの間にいつかは学ばなきゃいけないことだとは思うのですが、僕たちの場合は一番最初に「夏休み」でその現実というのを学ぶんでしょう。

だから「夏休みの終わり」には何か特別な寂しさがあるんだと思います。

夏が始まりましたね。僕は今年こそは海に行こうといつも思うのですが、ここ10年以上は海に行ってません。今年は行けたら良いのになと思いつつたぶんいけないだろうなあとわかっています。みなさんも良い夏休みを。

#コラム

僕のcakesの連載をまとめた恋愛本でてます。「ワイングラスのむこう側」http://goo.gl/P2k1VA

この記事は投げ銭制です。この後、オマケで僕のちょっとした個人的なことをすごく短く書いています。今日は「最近、何十年もしたことない夏の行事ベスト3」です。

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