「ジーコと親しくした」と言うとなぜブラジル人は怒るのか、と『リオデジャネイロという生き方』

20年とちょっと前のこと。僕は東京のブラジルレストランでバイトをしてたんですね。

その時期、ちょうどジーコが日本にいて、たまにその僕が働いているブラジルレストランに家族と来ていたんです。

僕、一応カタコトながらポルトガル語がしゃべれまして、「ジーコのテーブル担当」みたいなのになったんですね。

ところで、ご存知の方もいると思うのですが、ブラジル人の有名人って偉ぶらないんです。あえて、一般人に対してすごくフランクに接するんですね。

で、ジーコも僕に対して「お、元気(Tudo bem)?」って感じで声をかけてくれて、握手なんかをしてくれてたんです。

まあ僕が「変なポルトガル語をしゃべる日本人」だったからだとも思うんです。僕らも例えばアメリカで「変な日本語をしゃべるアメリカ人」が日本レストランでいたら、気になりますよね。

さて、そんな「ジーコと親しく話した」という話を、後にブラジルに行って、現地で知り合ったブラジル人たちに言うと、彼らがすごく怒るんです。

「あのね、ジーコがその時期に日本にいたことは知ってるよ。でもオマエがジーコと親しく話したなんていうような嘘だけはついちゃいけない」

わかりますか? ブラジル人にとってジーコって天皇みたいな存在なんです。で、どう見ても一般人の若造の僕が「天皇がレストランに来た時、親しく話したことあるよ」って言ってるようなことになっちゃうんです。

ブラジル人にとって、そこまで「サッカー」って重大なことなんだなあと痛感した一件でした。

      ※

そんなブラジル人とリオ・デ・ジャネイロで話をしていたら、必ず聞かれることがありまして、「シンジ、どのクラブが好きなの?」ってことなんです。

わかりますか? リオにサッカーリーグがありますよね。そのリーグの中でどのチームのファンなのかというのを外国人である僕に質問しているんです。

それって、アメリカ人や中国人に「どの力士のファン?」とか「巨人と阪神どっちが好き?」って聞いてるのと同じですよね。

でも彼らにとっては「世界にとどろくリオのサッカーリーグのことくらい全世界の人間が興味を持っているだろう」って信じているんです。

だから僕としては「あのクラブが好きだよ」って答えたいなあと思ってはいたのですが、やっぱりよくわからなくて、「リオのサッカーには興味ない」って答えると、すごく寂しそうな表情を見せるんです。

       ※

さて、そんなブラジル人からの質問にはどう答えたらいいのかというがやっとわかる「本」に出会いました。

中原 仁&ケイタブラジル著『リオデジャネイロという生き方 不安も悩みも笑顔に変える「幸福の個人技」』 http://goo.gl/LZOjGx です。

ご存知の方もいると思うのですが、リオにはフラメンゴとヴァスコ・ダ・ガマという有名な2大有名クラブがあるんです。

そのどっちかを好きって言えば良いというのは知っていたのですが、この二つのどちらを好きと言えば、どういうイメージを持たれるのかというのがはっきりとわかりました。

詳しくは本を読んでほしいのですが、僕のキャラクターだと「ヴァスコが好き」と言えば良いというのが判明しました。

「どうして?」って聞かれたら、「ジョアン・ジルベルトとパウリーニョ・ダ・ヴィオラが好きだから」と答えるのもアリだということもわかりました。

      ※

さて、この本、基本的には同調圧力が強くて、ちょっとでも目立ってしまうと叩かれてしまうこの日本の雰囲気に対して「もっとブラジル人から自由に幸せに生きる方法を学ぼうよ」という内容です。

ここに細かくは書き移さないのですが、ひとつだけ。とにかくブラジル人って「人と違う」とか「ちょっと変わっている」とかってことを否定しないんです。

ミュージシャンでエルメート・パスコアルとか、ジョアン・ドナートとか、とにかく「ちょっと変わった人」ってすごくたくさんいるのですが、その人たちをすごく尊重するんです。そういうのってホント、日本から見ると「良いなあ」って感じます。

       ※

さて、この本のもうひとつ「素晴らしい箇所」は、リオ・デ・ジャネイロの食文化をすごくわかりやすく解説してくれているところと、現地のお店をすごくたくさん紹介してくれているところです。

例えば東京にきて、「どの焼鳥屋さんが美味しいのか」とか「沖縄料理が食べたかったらこのお店」とか「居酒屋だったらここ」とか「ライブが聞きたかったらこの店」とかってわからないですよね。

そういう現地情報が細かく写真付きで紹介されています。 

「パイナップルをはさんだ肉厚のサンドイッチ」とか「シーフードのフェイジョアーダ」とか「牛タンのマデイラソース漬け」とか「シーフードが中心の多彩な総菜を皿に盛ってもらってつまみながら飲むカジュアルなブチキン」とか「これから日本で新しい感覚で飲食店を試みよう」って人には「アイディアだらけの情報」が入っています。

現地に行かなくても、この本に書いてあるHPのURLをクリックして、メニューや写真を見るだけで料理のアイディアはわいてきそうです。

あるいはこの店の名前をそのまま画像検索すれば、「リオ・デ・ジャネイロの現地の人たちが楽しんでいる有名なお店はどんな内装なのか、そこに集う人たちはどういう雰囲気なのか、どういう料理やどういう飲み物を楽しんでいるのか」というのもわかりそうです。

さらに、アートスペースやライブの店、もちろんレコード屋の情報もあります。こんどのリオのオリンピックに取材で行く人は「必読書」だと思います。

そしてこの本でブラジルに興味を持ってくれたら、僕としても嬉しいです。なんか今の日本で窮屈な思いをしている若い人にも是非読んでほしいです。

#コラム

僕のcakesの連載をまとめた恋愛本でてます。「ワイングラスのむこう側」http://goo.gl/P2k1VA

この記事は投げ銭制です。この後、オマケで僕のちょっとした個人的なことをすごく短く書いています。今日は僕が好きなブラジル音楽のアルバム・ベスト3です。

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「ジーコと親しくした」と言うとなぜブラジル人は怒るのか、と『リオデジャネイロという生き方』

林伸次

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林伸次

渋谷でボサノヴァとワインのバーをやってます。http://www.barbossa.com/  『恋はいつもなにげなく始まってなにげなく終わる。』https://goo.gl/u2Guu1 韓国人ジノンさんとのブログhttps://goo.gl/B9MH6n