「文章を書く才能は?」という質問に答えました。

※水曜日は質問に答えています。

【質問】

私は文章を書く仕事がしたいなと思って、色々と書いています。林さんの書く文章が好きで、私もこんな風に書きたいなと思っていますが、時々、私って書く才能はないのかなと悩むときもあります。

村上春樹さんが「文章を書く才能はもってうまれたもの」というようなことを書いていましたが、林さんはどう思いますか?

【答え】

僕の文章、好きですか? ありがとうございます。

まず「生まれついた才能はあるのかどうか」という問題について考えてみますと、それはやっぱり関係ありますよね。

足が遅い人が毎日練習したとします。そこそこ早くはなってもオリンピックに出場するなんてところまではまず無理です。

向き不向きみたいなのもあると思います。

例えば僕はバーテンダーという仕事をしているのですが、みんなに「天職だねえ」とか「向いてるねえ」と言われます。

僕は「そうかなあ?」とかなり疑問なのですが、才能と言いますか、僕の生まれ持った性格で「どんな人とでもうまくやっていくことが出来る」というようなのがあるみたいなんです。

もちろん僕も喧嘩はするし、「この人イヤだなあ」と思って距離を置くこともあるのですが、「bar bossaを選んで、わざわざ来てくれたんだから、お店にいる数時間の間は気持ちよくいてほしい。僕の出来る限りの力で『いやあ、今日は楽しかったなあ』って感じてほしい」と思って、お客さまと接しています。

そして、その「お客さまとの接し方」が、僕には他の人より「心地よくさせる能力がある」ようなのです。

そしてもちろん、僕よりもよっぽど「心地よい接客」が出来る人はすごくたくさんいます。お蕎麦屋やレストランやバーで「うわあ、この人の接客すごい…負けた…」って感じることがよくあります。

でも、おかげさまでbar bossaが18年も続いているということは、「僕の接客スタイル」が好きな人が少なからずはいて、それで「あ、bar bossaに行こうかな」って思っていただけているんだと思います。

文章も同じことのように思います。

もちろんある程度までの上手さというのは必要だとは思いますが、その「ある程度のライン」を越えてしまったら、その後は「どれだけ自分の個性を出して、読み手に『この人の文章面白いなあ。好きだなあ。また読みたいなあ』って感じさせられるか」というのがポイントのように思います。

謙遜でもなんでもなく、僕は決して「名文家」じゃないと思います。

広告のちょっとした文章や、ちらっと見かけたブログなんかで「うわあ、この文章すごく上手い。何だろう、このわかりやすくて美しい文章は。すごいなあ」って感じることはよくあります。

でも、「僕の文章が好き」って言ってくれる人は、そういうことよりも、僕のこの「世の中への感じ方」とか「語り口」とか「切り取り方」とかを気に入ってくれているんだと思います。

そういう意味では文章というものは「すごくその人の性格や生き方が出る」ので、難しいといえば難しいし、上手くはまればはまることもあるように思います。

                ※

さて、たぶん若い方なんですよね?

年長者というか、先輩から少しだけアドバイスのようなものをしても良いでしょうか。

これよく書いている話なのですが、コナン・ドイルがシャーロック・ホームズの話は全然書きたくなかったということはご存知でしょうか。

本当はコナン・ドイルはスピリチュアル系の研究に夢中で、そのことを世の中に広めたかったらしいんです。

でも読者が「ホームズの話が読みたい」と強く要求したから、いやいや書いていたそうです。

シャーロック・ホームズの話、すごく面白いですよね。ワトソンくんという視点とかほんといろんなアイディアが盛り込まれてます。僕も小さい頃、夢中になりました。たぶん人類の歴史が続く限り読み継がれる名作だと思います。でもコナン・ドイル本人は「みんなが書いてって言うから、いやいや仕方なく書いていた」んです。

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それで先輩として思うのは「周りの人たちの意見に素直に従う」って本当に大切だということです。

もちろん「自分はどうしてもこういう作品が書きたい」とか「世の中にこのことだけはどうしても発表しておきたい」という「自分の意志」を大切にするのもアリかとは思います。

でも、「あの話、すごく良かったよ」とか「ああいうのをもう少し書いてみれば」とか、あるいは「あれは面白くなかった」といった「周りの人の意見」を真摯に聞くのがすごく大切なような気がします。

だから何か文章を書いたら色んな人に読まれるところで発表するのをオススメします。

               ※

あともうひとつです。

ある美術学校で、生徒たちの半分には「たったひとつの自分だけの最高の質の作品をつくりなさい」と伝え、もう半分の生徒たちには「質は全く気にしなくて良いから、毎日毎日、量をたくさん作ることだけを意識して作品をつくりなさい」と指示したそうです。

すると「たったひとつの質の良い作品」を作った人たちよりも、「量だけにこだわってたくさん作った作品」の方が「質が良いもの」が多かったそうです。

ですので「上手いとか下手とか」はあんまり考えないで、僕みたいにとにかく毎日書く、そして毎日発表するというのオススメします。

あ、このnoteで発表するの、オススメしますよ。すごく真面目な二人組が真剣に選んでくれて、良ければSNSなんかで拡散してくれるから、すごく新しい読者が増えますよ。

では、お互いがんばりましょう!

※この質問コーナー、書籍化のお話が来ました。「人生相談の本」にしたいとのことです。出来れば「人生相談的な質問」をいただけますでしょうか。makijobim★yahoo.co.jp(★を@にしてください)に質問メールを送ってください。よろしくお願いいたします。

#コラム

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