新しいことを始めると、前のが古く感じること

ボウモアとかマッカランといった世界的に有名なブランドのウイスキーが、突然、ラベルやボトルの形を変えることがあるってご存じですか?

これ、二つ理由があるらしくて、一つは「ニセモノをなくすため」らしいんですね。

こういう有名銘柄だと1本5000円とか1万円とかしますから、全く同じボトルやラベルを作って、中身は安物ウイスキーにして売るという「ニセモノ」がどうしても出てくるんです。

でも、こういう風にたまにラベルやボトルを変えていると、ニセモノ業者はそれを追いかけるのにコストがかかるので、そのブランドでニセモノを作るのは最初から避けるそうなんです。

あと、ラベルやボトルを変える理由はもちろん「新しいイメージを作る」です。

これ、ネット上のサービスでもよくあるから、みなさん感覚的にわかると思うのですが、「新しく変わった瞬間」って、ほとんどの人が「前が良かった」って感じますよね。

人ってどういうわけか、「長い時間、慣れ親しんだモノ」が変わると、「ええ? 前が良かった」って感じるように出来てるんです。

こういう感覚って一部の「とにかく新しいモノが刺激的で良い!」って感じる「流行の最前線で常に戦っている人」は別にして、普通、人は保守的に出来ているんだと思います。

でも、でも、なんです。

しばらくして「新しくなったマッカラン」や「新しくなったサービス」に慣れてきますよね。

そしたら昔のマッカランやサービスがすごく古くさく見え始めるんです。

その「昔のが古くさく感じはじめる瞬間」に、その「イメージを新しくする」という試みは成功したってことなんじゃないのかなって僕はいつも思います。

そうなんです。「イメージを新しくする」というのは、逆に言うと「以前のイメージを古く感じさせる」ってことだと思うんです。

 ※

今、bar bossa20年やってるのですが、とにかくしょっちゅう「新しいこと」を始めているんですね。

例えば以前は、お通しを出してチャージ500円をいただいてたんです。今、考えるとすごく古くさいですよね。何にも注文していないのに何か出てきて、それに金額がかかるって世界標準じゃないですよね(チャージをとっているお店の方すいません。もちろんあえてチャージをとって差別化するというコンセプトもアリだと思います)。

最近だと「店内を全面禁煙にしたこと」です。これ、色んなことがあったのですが、今一番感じるのは「以前、店内でタバコが吸えてたんだ。なんて古くさいんだろう」ってことなんです(愛煙家の方すいません。これに関してはまたあらためて報告します)。

そうなんです。僕は「新しく変えた」から、以前が古くさく感じるのですが、それらってもう実は「古いこと」だったんですね。

 ※

さて、最近は「シェイカーを使ったカクテル」を新しく始めたわけですが、すごく評判いいです。

ところでこの「シェイカーをカシャカシャ」って、たぶん「すごく昔の印象」があるんです。トム・クルーズのカクテルって映画の印象が大きいと思うのですが、1988年の映画なんです。

でも、今の若い人って逆に「シェイカーでカシャカシャ」は本物を見たことないから、新しく感じるようです。アナログ・レコードと同じ現象ですね。

「新しい」っていう感覚って、こういう「一周回ってくる新しさ」もあるからまた難しいんですよね。

この「新しいと古い」って本当に微妙で難しくて、正解はどこにもないのですが、とりあえず僕は常に何かを変えて新しくやっていこうと思っています。

#コラム

色んな質問に答えた本が出来ました。『ちょっと困っている貴女へ バーのマスターからの47の返信』 https://goo.gl/dZ32IW 立ち読みできます!
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bar bossaに行ってみたいと思ってくれている方に「bar bossaってこんなお店です」という文章を書きました。→ https://note.mu/bar_bossa/n/n1fd988c2dfeb

この記事は投げ銭制です。この後、オマケで僕のちょっとした個人的なことをすごく短く書いています(大したこと書いてません)。今日は「なっちゃんがいないと」です。

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