もし僕が納豆会社の営業をまかされたら

僕が生まれ育ったのは徳島でして、ここは関西文化圏なので「納豆」って全く食べないんですね。

ところで、この「○○という地域では○○は全く食べない」ということを書くと、必ず「食べますよ」とか「普通にスーパーマーケットで売ってますよ」というコメントのようなものを頂きます。

うーん、そうなのかも知れないですね。でも聞いてください。

例えば、僕はたぶん、「お蕎麦」というものを18歳になって東京に来るまで食べた記憶がないんです。

もちろん徳島にお蕎麦を食べさせるお店はたくさんあったし、普通にスーパーマーケットに行けばお蕎麦は売ってたと思うんです。

でも徳島の場合、完全な「うどん文化圏」でして、お蕎麦を食べた理由が思いつかないんです。

例えば、そういうお蕎麦もうどんも出している老舗の大きいお店があって、そこに親と入った記憶はあります。

でも、そこで子供の僕は「お蕎麦」はどう考えても注文していないと思うんです。たぶん「カツ丼」みたいなものを頼んだはずだし、もし「麺もの」なら「キツネうどん」とか「カレーうどん」を頼んだはずです。

そして、家庭での食卓ですが、うどんはたまに登場しました。でも、僕の母がまさか「お蕎麦」を出す理由ってどこにもないんです。そのくらい「お蕎麦」って徳島では「アウエイ」なので、「その食べ物の存在はもちろん知っているけど、『一度食べてみたい』なんて思わないし、なんとなくずっと食べてきていないもの」なんです。

それと同じで「納豆」ってたぶん徳島のスーパーマーケットには売っていたとは思うのですが、「食べる理由」というか「食べるきっかけ」がないんです。そして恐らく、他の「関西文化圏」の人たちも同じような感覚で「なんとなく納豆は食べたことがないまま人生を過ごしている」と思います。

 ※

さて、僕が納豆を初めて食べたのはこういうきっかけでした。

10代の終わりの頃、とにかくいろんなバイトをしたのですが、一度、一週間くらいだけの短期で深夜の印刷工場で働いたことがありました。

そこで朝まで働いた後、「まかないの朝ご飯がつく」というのにひかれて、僕は応募したように思います。

で、初日の仕事が終わって、会議室みたいなところにバイトたちが集められて、出てきた朝ご飯が、白いご飯とお漬け物と味付け海苔と生卵とお味噌汁と「納豆」だけだったんです。

確か「ご飯はお代わり自由」で、みんなガンガンお代わりしていました。

で、一杯目は卵と海苔で完食したのですが、二杯目いきたいですよね。若いし、お腹すいてるし。で、おもいきって二杯目は納豆を見よう見まねでぐちゃぐちゃ混ぜて、かけて食べてみたんです。

「あ、結構いける」って思いました。最初は「息を止めて食べようかな」って気持ちだったのですが、「そんな最悪な臭いじゃない」って思いました。

で、それ一回だけならそれで納豆との出会いは終わってたと思うんですね。でもそのバイト、一週間ありまして、7回も納豆食べたんですね。はい、完全に「納豆の美味しさ」を知ってしまいました。

それからは積極的に買って食べるようになりました。

この経験でいつもいつも思うのですが、「納豆って無理矢理何度も食べさせたら、そうとう癖になる食材」だと思うんです。

ただ、この「納豆」を食べるきっかけがないだけなんだと思うんです。

 ※

東京で生活していると、納豆ってスーパーマーケットですごく安くて、いろんな「付加価値」を開発して、何かと「過当競争」していますよね。

それを見るたびに「君たちは小さい井戸の中で勝負をしていちゃダメだ。もっと大きい海に出よう」って思うんです。

例えば、関西の給食に色々と政治で働きかけて、毎日子供たちに食べさせてみるとか、中国の日本の企業の食堂で「無料で配布する」とか、とにかく「食べるきっかけ」を作ってあげると、みんな確実に「癖になる食材」だと思うんです。

とりあえずは「白いお米を食べてお箸を使う食文化圏」ならどこでも大丈夫だと思うんです。

アジアの朝、みんながあの白い容器をバカっと開けて、ぐちゃぐちゃ混ぜている風景が目に浮かびます。いけると思うんですよねえ。

 ※

あ、もちろん納豆は「例えば」です。納豆以外のなんでも応用可能かと思っています。

#コラム

僕のcakesの連載をまとめた恋愛本でてます。「ワイングラスのむこう側」http://goo.gl/P2k1VA

この記事は投げ銭制です。この後、オマケで僕のちょっとした個人的なことをすごく短く書いています。今日は「納豆の好きな食べ方ベスト3」です。

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もし僕が納豆会社の営業をまかされたら

林伸次

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林伸次

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