チップって難しいけど

20年以上前のこと。

ブラジルのバイーアで、現地のブラジル人の友人たちとピザ屋さんに入って、お昼に食事をしたことがありました。

色々と食べてお会計となった時、みんなが「チップはいくらにするべきか」ということでちょっと盛り上がりました。

その時、一緒に食事をした人たちは「中流以上の比較的裕福な人たち」だったのですが、「私、チップってよほどのきちっとしたレストランじゃなきゃ払わない」とか「いやいや、あのウエイターはこのチップで生活しているんだから、ちょっとくらい置いていこうよ」とか「でもランチだよ。そんないらないんじゃない」とかって感じで、かなり場は盛り上がりました。

そのとき、「なるほどなあ。ブラジル人たちもチップってどうすべきなのか人によって考え方があるんだなあ」と、とても勉強になりました。

       ※

ところであなたは「チップ制度」って好きですか?

日本人はほとんどの人が「苦手」と感じているのではないでしょうか。

「ウエイターの気持ちの良いサービスに対して『ありがとう』という意味でお礼をしたい」という考え方には賛同できても、「どうも、お金を渡すという行為自体が『上の人が下の人に渡す』というイメージがあって、ちょっと生理的に苦手」という感覚が一番多いのではないでしょうか。

僕も実はそういう気持ちでいました。

でも実際に、バーテンダーという仕事をしていると、たまに「お釣りはいいです」という方がいたり、特に外国の方でチップを置いていく方もいます。

そういう瞬間、僕としては「正直、嬉しい」んです。

例えば、開店当初、ほぼ毎週のように来店する外国の方がいました。彼はそんなに僕とは話すタイプの人間ではなく、「あ、こんばんは」くらいの言葉しか交わさない関係でした。

でもある日のこと、帰り際に、「ワタシ、アシタ、キコクシマス。コノバー、トテモスキデシタ。アリガトウ」と言って、お勘定とは別に3千円置いていってくれたんです。

もちろん裕福な方なんだろうなとは思うのですが、彼なりに「僕とこのbar bossaに対して『このお店本当に好きだったよ』というような気持ち」を伝えたかったんだと思います。でもお互いそんなに言葉が通じるわけでもないから、でもやっぱり何か伝えたくて、そしてそれが3千円というお金だったんだと思います。

これは正直、とても嬉しかったです。そしてそのとき「お金って意外といろんな気持ちを伝えられる道具なんだなあ」と気がつきました。

それからは「良いお店だなあ」と思ったら、意識的にお金をたくさん使ったり、ちょっとしたチップを残したりということを僕もするようになりました。

        ※

ちょっと前から僕のコラムに「投げ銭制」を導入しています。

これ、加藤貞顕さんがインタビュー https://note.mu/bar_bossa/n/n37ddafe1741d で言ってた「インターネットのコンテンツにお金を払うという習慣を定着させたい」という心意気に賛同して、「じゃあ、自分くらいのネームバリューでは完全課金制は無理だから、投げ銭制にしよう」と導入しました。

ちなみに、予想以上に投げ銭していただいています。

やっぱり「ビジネス系」と言いますか、マーケティングっぽい内容の記事にすると、2000円近くまでいきます。

あと、「嬉しいなあ」と思うのが「金曜日の恋愛小説」の時に投げ銭をいただける時です。

もう何人か「投げ銭」をしてくれる人のメンツが決まっているので、「あ、この人、この小説、面白いって感じてくれたんだ。たぶんこの辺りが好みなんだろうなあ。じゃあ、この路線でもう一本書いてみよう」って思ったりもします。

あと、「面白いなあ」と思ったのが、先日、ある記事で、あるCDのことを「少しだけ」書いたところ、そのCDのレーベルの方から投げ銭とサポートを頂きました。

その方としては、わざわざメールで、「林さん お世話になっております。お久しぶりです。先日、林さんのnoteの記事を読んでいて驚きました。弊社のCDについて書いていただいてましたね。ありがとうございます。最近、お店の方はいかがですか? 云々あと続く」とやるよりも、「お金で表現」したんでしょうね。

「粋」だなあ、あの方らしいなあ。だからあの方ってミュージシャンや選曲家に信頼されて、仕事がいっぱいくるんだよなあ、と痛感しました。

「お金を誰かに渡す」って本当に難しいけど、でも「ただの道具なんだ」って気づけば「じゃあ、もっとグルグル回していこうかな」って気持ちになれますよね。

みなさん、いつも「投げ銭とサポート」ありがとうございます。

#コラム

僕のcakesの連載をまとめた恋愛本でてます。「ワイングラスのむこう側」http://goo.gl/P2k1VA

この記事は投げ銭制です。この後、オマケで僕のちょっとした個人的なことをすごく短く書いています。今日は「渋谷にジャマイカのお店ってあるんですね」です。

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