恩と義理は難しい

職業柄、人と人のトラブルというのをよく見ているのですが、こういうパターンがあります。

Bさんがまだ駆け出しの頃に、AさんがBさんにいろんな人を紹介してあげたり、いろんなことを教えてあげたりして、ずいぶんと面倒をみてあげました。

その後、Bさんが成功して、Aさんが「Bの成功は俺が面倒みてやったからだ」と思ってるのに、Bさんは全然Aさんに恩を返そうとしません。

Bさんは恩を返さないどころか、Aさんを避けているような感じもします。

そこで、僕がBさんにその件を聞いてみますと、「Aさんがいろんな人を紹介してくれたり、いろんな事を教えてくれたりしたって思ってるのはわかりますが、当時から結構迷惑だったんですよ。あの人が教えてくれたことで役だったものはひとつもありません。それなのにすごく恩着せがましくて、最近は僕から仕事をもらおうと思って近づいてくるんで避けてるんです」ということです。

うーん、難しいですね。これは実際どちらの言い分が正しいのかよくわかりませんよね。なかなかこんがらがってます。

ところでブラジル人って「恩」とか「義理」とかいう発想がないっていうのはご存知ですか?

例えば、レストランで食事をおごってあげたとしますよね。そしたら「何かの形でお返ししなきゃ」って僕らは考えてしまいますが、ブラジル人はそんなことは考えないんです。もちろん「すごく美味しかった。良い時間だった。お金まで出してくれて本当にありがとう」という感謝の気持ちは見せますが、「以上」なんです。

そして、その彼が、また他の誰かに食事をおごったとしても、彼はそのおごったことの見返りなんて期待しません。彼はおごりたかったからおごったのであって、何かを返してもらおうと思っておごったわけじゃないんです。

誰かに親切にしたければ、する。そしてそれがぐるぐると回っていけば、世界は良くなるとブラジル人は信じているようなのです。

この発想って最初のうちはうまくなじめないのですが、慣れてくると「よく出来てるなあ」とも思うんですよね。

例えば「いいね!」をたくさん押してくれるから、たまにはこちらからも「いいね!」を押し返さなきゃなとか、あの人はいつも旅行に行ったらお土産を買ってきてくれるから、あの人にはお土産を買わなきゃとか思わなくて良いんです。

本当に「良いなあ」と思ったら「いいね!」、旅先で「あ、これあの人に買って帰ったら喜びそう!」と思ったら買って帰る。そういう発想なんです。

でも、やっぱり日本人として、いきなりそっちの世界には飛び込めないですよね。「恩」とか「義理」とか、難しいものです。

#エッセイ

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