お友だちからの恋

「ねえ、中島くんって好きな女の子いる?」

「いないけど」

「ほんと? じゃあ、私、中島くんのことすごく好きなんだけど。って突然言われても困ると思うけど。でも、あの、友達から始めてほしくて。

私、中島くんのことすごく好きだから、これから友達として、いろんなこと話したり、電話したり、どこかに遊びに行ったりして、そして、もし良かったら私のことを少しでも好きになって欲しい」

「俺が岡本さんのことを好きになってどうなるの?」

「もし中島くんが私のことを好きになったら、それって両思いだから、そしたら、友達の関係は卒業して、付き合いたいと思うんだけど、どうかなあ」

「俺、岡本さんのこと、好きになるかな。ちょっとわかんない。岡本さんはどうやって俺のことを好きになったの? だって全然教室で話したことないじゃん」

「私が中島くんのことを好きになった理由? 最初は中島くんがバスケットの部活練習をしているのを見て、教室では全然見せない真剣な顔を見て、うわ、意外だなって思ったの。

その次の日、教室で見たら、やっぱりいつもの中島くんで授業中は居眠りなんかしてて。

それからもうずっとずっと中島くんのことばかり見るようになって、中島くんが女の子と話していると、あの子のこと好きなのかなって気になったり、そんなことを毎日ずっと思っていたら、あ、私、中島くんのことすごく好きなんだって気づいたの」

「あはは。岡本さんってなんか正直だね」

「わあ、嬉しい。たぶんそれで良いんだと思う。私ずっとずっと毎日中島くんのことばかり見てて、もうストーカーみたいに中島くんのこと知ってるの。中島くんに弟がいるのも知ってるし、中島くんが日曜日に犬の散歩しているのも知ってるの。

こういう変な告白の仕方にしたのも、中島くんが後輩のすごく可愛い女の子から『付き合ってください』って言われたのに、『よくわかんない』って言って断ったって噂を聞いたのね。

その子すごく可愛いのに私なんかが告白してもダメじゃない。

それで私、お姉ちゃんに相談したの。

そしたらお姉ちゃんが、『友達からで良いですって言って、ちょっとづつ近づいてそして付き合えばいいじゃん』って言うからそうしたの。

だから、私のこと好きになれなくても良いから。友達のままでも良いから。お願いします!」

「え、うん。じゃあ友達から」

※※※

bar bossaのカウンターで岡本さんがそこまで一気に話し、そしてヴァンショーに口をつけた。

「それで、私、家に帰って、またお姉ちゃんに相談したんです。

『友達まではうまくいったんだけど、次はどうすれば良いの?』

『あ、友達にはなれた? じゃあ次は彼のほっぺたに突然キスをするの。大丈夫。学校の帰りに、中島くんのスキを見て、チュッって可愛くほっぺたにキスして、じゃあねって手を振って走って帰ってくれば良いのよ』

『え、そんな突然。友達なのにどうして?』

『あのね、高校2年生の男の子ってセックスのことばかり毎日毎日考えているの。その中島くんって童貞でしょ。そしたらもうとにかくセックスしてみたいって毎日毎日考えているの。それがね、突然あんたみたいな女でも突然キスされたら、あ、この女とセックス出来るかもって思っちゃうの。その後は中島くん、あんたのことばかりずっと気になりだすから。今まであんたのこと、何にも見てなかったでしょ。でも、あの時のあんたのキスの感覚がずっとほっぺたに残ってて、もうなんとかしようって思い始めるものなの』

『ほんとに?』

『もう絶対に。これは自信がある』

『で、中島くんはその後どうすると思う?』

『まず中島くんの方からしょっちゅうお誘いがあると思うなあ。今度デートしようとか、うち、今日誰もいないから家に来ない? とか言ってくるから。もあんたはギリギリのところでずっと逃げ続けるの。そしたら中島くんあんたのことはもう大好きになってるから』

『ほんとに? そんなことあるの?』

『大丈夫。お姉ちゃんのこと信じて』」

「岡本さんのお姉さん、すごいですね。それ、絶対にうまくいくような気がしてきました。それでどうなったんですか?」

「お姉ちゃんの言うとおり、ほっぺたに軽くキスしてからは中島くんがすごく私に積極的になりました。もうしょっちゅう私に連絡してくるようになったし、ほんとのキスもしました。

でもお姉ちゃんの言うとおりに逃げ続けたら、中島くんが私のことを好きだって言い出したんです」

「うわ。お姉さんの予想通りですね」

「はい。それで付き合い始めました。その時の経験から私、女から少しだけアクションを起こして、その後は逃げるっていうのが一番なんだって気づいたんです」

「そうですかあ。参りました」

「男って可愛いですよね」

と言って、岡本さんは笑いながらヴァンショーのお代わりを注文した。

#小説 #超短編小説

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林伸次

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