女性が「これ私の若いころ」って写真を見せてくれると
※土曜日は読む人が激減することが判明したので個人的な話を。
女性が突然「これ、私の若い頃の写真」って言って、見せてくれることってありますよね。
僕、実はほとんどの場合、「へええ、こんな感じだったんだ。今の方が良いなあ」って思ってしまうんです。
おそらく本人は、たぶんすごくモテた頃の写真だったりして「ほら、わたしこんな感じで若くてすごくモテたんだからね。よろしく」って気持ちなんだろうなあっていうのがいつも伝わるのですが、僕としては「へええ、その頃に出会わなくて良かった。今の方がよっぽど魅力的だよ」って思っちゃうんです。
その感覚ってどういうことなんだろう、ってずっと前から気になってまして、最近、理由がわかってきました。
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僕、今、ブロッサム・ディアリーというアメリカのジャズ・シンガーのレコードを集めているんですね。
僕はコレクターじゃないんで、ファーストプレスとかUK盤とかそういうの関係なく、さらに「ウオントリスト」を作らずに「持ってないアルバムがあったら買う」という、すごく素人的な集め方をしていまして、そういう買い方だと「全く想像していなかったタイプのアルバム」にぶつかるんです。
ええと、中古レコードに詳しくない人にもう少し説明いたしますと、普通は「ディスコグラフィー」みたいなのをネットやジャズ専門誌でチェックしておいて、「自分が持っていないアルバムはこれとこれ」ってノートに書いたりして、ジャケットも覚えて、はたまたどんな曲をやっているのかとか、どんなバック・ミュージシャンが参加しているのかもチェックして、「だいたいどんな音なのか」っていうのを想像しながら買い集めるんです。
でも僕の場合、行きあたりばったりなので、「へえ、こんな時代のがあるんだ」って感じなんです。で、本人の顔写真がジャケなので、「あ、50歳くらいはこんな感じなんだ。ふーん」って感じで買っちゃうんですね。
で、お店に持ち帰って、ターンテーブルの上に置いて、聞きますよね。
すると不思議なことに、毎回毎回、どんなアルバムでも「そうかあ。この時期のブロッサム・ディアリーはそんなに好きじゃないなあ」って感じてしまうんです。
でも、何度か聞いているうちに、当時のブロッサムの気持ちや演奏への思いなんかが理解できはじめて、「あ、このアルバムやっぱり良いなあ」ってわかってくるんです。
で、どうして最初に聞いた瞬間は「良い」と感じないのかがわかりました。
僕、たぶん、嫉妬しているんです。
彼女の全部の時期を知りたくて買い集めているんですが、「僕が知らない時期の彼女の表情」を見つけてしまうと、ちょっと嫉妬してしまうんです。
「ああ、ブロッサム、僕が知らない時期もいっぱいファンがいて、すごく楽しそうに演奏していたんだ」って思うと、なんかちょっと嫉妬してしまうんです。
で、その「僕が知らなかった頃のアルバム」を聞き込んで、その当時のブロッサムともわかりあえてくると、「好き」になるみたいなんです。
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ちなみに「ブロッサム・ディアリーの本」を作りたくなっています。
ジャズコレクターの川嶋さんに「林さんが、文章を全部書いた方が良い。『ブロッサム・ディアリーって本名だって知ってましたか?』って書き出しの本が良い。あの超短編小説『ブロッサム』 https://goo.gl/VSMhkD も収録した方が良い」と言ってくれてまして、でも、「すごい有名人」にちょこっとづつ「アルバム解説」や「コラム」を書いてもらうのも良いかなと思っています。
すいません。ほんと、個人的な話でした。1000冊くらいは売れると思うのですが、いかがでしょうか。
僕のcakesの連載をまとめた恋愛本でてます。「ワイングラスのむこう側」http://goo.gl/P2k1VA
この記事は投げ銭制です。この後、オマケで僕のちょっとした個人的なことをすごく短く書いています。今日は「渋谷のこの手のお店って意外と入ってる」です。
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