日本人ならではの洋食店の行方

あるダイニング・カフェ&バーが開店して1年ちょっとで閉めてしまったんですね。

メニューを変えたり、飲み放題を始めたり、コンセプトを変えたりと、色々試行錯誤はしてたみたいなんですけど、ダメだったみたいで。

パスタがあって、サラダがあって、ウイスキーもカクテルもワインもあってカプチーノもあって、日本中どの都市にもある、いわゆる典型的なダイニング・カフェ&バーだったんです。

そのお店が1年ちょっとでダメだったって僕の中ではかなりな「大事件」なんです。

 ※

日本独自のオリジナルな「洋食屋」というスタイルがありますよね。ハンバーグやロールキャベツやオムライスがある、あの洋食屋さん。

あれって日本人が欧米の料理を、いかに日本人の口にあうかっていうのを試行錯誤した結果たどりついた、日本ならではの「名コンテンツ」だと思うんですね。

あの洋食をお店で体験して、同じような料理を家庭でも食べたいと思って、暮らしの手帖なんかがそのレシピを紹介して、コロッケやハンバーグを普通に食べるようになって、日本人の食卓を変えたと思うんです。

そういう「日本人らしい」、海外の料理やスタイルをあれこれ工夫して、日本人にあうように作り直して、ひとつのスタイルを完成させるってよくあると思います。

その流れをくむものとして、アメリカのバーと、イタリア料理と、フランスのカフェの雰囲気をうまく融合させて、日本人にあうようにアレンジされたのが「ダイニング・カフェ&バー」だったと思うんです。

僕としては、あの「パスタがあって、カシスソーダやスプモーニがあって、シーザースサラダがあって、カジュアルなワインがあって、カプチーノがあって」っていうのが「現代の日本の洋食屋の究極の到達点」だと思っていたんですね。

どの街にもそのタイプの有名店があって、そこにフライヤーを置いてもらったり、店員に恋をしたり、週末にお洒落してそのお店に恋人といったりってみんな経験したことだと思うんです。

合コンにもデートにも打ち合わせにも使えるし、お酒も飲めるし車の人も大丈夫だし、お洒落な雰囲気もあるし、すごく使い勝手がいいスタイルだと思うんです。

それが都心だと、1年ちょっとでつぶれてしまうんだっていうのがかなり僕としては大事件なんです。

 ※

もちろんたいめいけんが今でも毎日、満席なように、この後もずっと残っていって「定番名店」になるダイニング・カフェ&バーってたくさんあると思うんです。

そのくらいこのスタイルって日本人にしっくりくるというか、使い勝手がいいし、いつまでも若い人がちょっと背伸びして行きたいお洒落な存在だと僕は思うんです。

でも、冒頭のお店がつぶれたっていうことは、これからは少なくなっていくスタイルなんだなって思いました。

そして思うのは、この後の「次の日本人のための洋食店のスタイル」ってもう出てきているのでしょうか。

アヒルをオリジナルとするあのスタイルが今後の日本の洋食店のスタイルになるのでしょうか。

あるいは僕と妻がよく行くハナイグチのようなお箸で食べる洋食店のスタイルが残るのでしょうか。

それとも他のジャンルがそうであるように、すべて細分化していって、すごく流行るスタイルなんていうのはなくなるのでしょうか。

それとももう「欧米を輸入する」のはやめなのでしょうか。

今、結構変わり目だなあと思う、飲食業を24年経験している人間の気持ちでした。

#コラム

色んな質問に答えた本が出来ました。『ちょっと困っている貴女へ バーのマスターからの47の返信』 https://goo.gl/dZ32IW 立ち読みできます!

https://goo.gl/Q6mRvL

bar bossaに行ってみたいと思ってくれている方に「bar bossaってこんなお店です」という文章を書きました。→ https://note.mu/bar_bossa/n/n1fd988c2dfeb

この記事は投げ銭制です。この後、オマケで僕のちょっとした個人的なことをすごく短く書いています(大したこと書いてません)。今日は「みんな花見なのかな」です。

ここから先は

163字

¥ 100

サポートしたいと思ってくれた方、『結局、人の悩みは人間関係』を買っていただいた方が嬉しいです。それはもう持ってる、という方、お友達にプレゼントとかいかがでしょうか。