作家は他の本をたくさん読むべきか、と、ひみつ堂のヒミツ

作家は他の本をたくさん読むべきか、あるいは音楽家は他の音楽をたくさん聞くべきかという問題ってありますよね。

これ、どう考えても、「たくさん読む、たくさん聞く」方が良いと思います。

基本的に創作活動って「模倣」から始まります。すごく大好きな作品や、憧れのアーティストの作品をモノマネして、そしてまた別のアーティストの作品を発見してそれをモノマネして、そういうことを重ねていくうちに自然と「自分らしさ」のようなものが出てきて、「オリジナルなスタイル」が出来上がるんだと思います。

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ところで僕、「このアーティストはどうやってこの作品のアイディアや構想を思いついたんだろう」って考えるのが好きなんですね。

例えば宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』という名作、どうやって、あの時代に、日本の田舎で、突然、宮沢賢治たった一人で、あんな設定を思いつけたんだろうって、すごく疑問に感じるんです。

たぶん、想像するに、当時、宮沢賢治はすごく独りぼっちで(死ぬまで童貞だったんですよね)、ずっと夜空を何時間も何時間も毎晩、眺めていたんだと思うんです。

他にも『星の王子様』とか『アルケミスト』とか『かもめのジョナサン』とか色々ある、そういう突然出てくる、他の作品の影響のようなものをあまり感じない「すごくオリジナルな世界」って、他の作品なんて見えなくなってきて、すごく孤独で、心がとぎすまされてきた時に、ある日、降りてくるような気がするんです。

もちろんたくさん本を読むべきだし、たくさん音楽を聞くべきかとは思うのですが、ある程度まで自分のスタイルが固まったら、その後は周りから隔絶した世界に一人で飛び込んで、自分だけの感覚で夜空や時空や自分の想像力という世界を飛び回らないと、ああいうすごくオリジナルな世界って生まれてこないんだろうなって思います。

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谷中にひみつ堂という行列ができるかき氷屋さんがあるのはご存じですよね。

1年中、かき氷だけで営業して、1000円のかき氷を1日500杯売り続けているそうです。

このお店のオーナーの森西浩二さんが書いた『ひみつ堂のヒミツ』という本を読んでいて、「そうかあ、飲食業も、今までになかったような全くなオリジナルなメニューやオリジナルな店舗を作ろうと思ったら、宮沢賢治たちと同じように、同業他店は参考にしないで、自分だけでゴリゴリと自分の世界を作るしかないんだなあ」って気がつきました。

この森西さん、僕のような普通の飲食業のように、どこかで修行をして、いろんな経験を重ねて、自分なりのメニューや店舗を作ったわけではなく、とにかく「自分だけの方法」で、かき氷に出会い、読んでてハラハラするような失敗にぶつかり、試行錯誤を繰り返し、「全く新しい今までになかった飲食店」を作り出してしまうんです。

この試行錯誤がとにかく面白いんです。

例えば、森西さんは他のかき氷屋さんは全く食べないそうなのですが、ひとつやっていることが、年に何回か銀座のデパ地下をじっくりまわって、自分が食べたいもの、売れているものを、スタッフの分もたくさん買ってかえって、みんなで食べるそうなんですね。

それでスタッフの反応を見るそうなのですが、みんなの口に出たコメントは参考にしないそうなんです。それよりもみんなの手が早く動くもの、いち早くなくなるものが「本当においしいもの」なんだそうです。

こういう色んな、ひとりだけでたどり着いた「ヒント」がこの本には、おしみなく書かれていて、これはもう読んでもらうしかないのですが、やっぱりこういう「全く新しいオリジナルなもの」を作り出せる人はこの4つの条件をクリアーしているような気がします。

「とにかく頭が柔らかくて何でも新しく試すことができる」
「行動力がとてつもなくある」
「小さい成功で満足しないで、とにかくその先へと進み続けようとする」
「誰かとの出会いを大切にする」

この本、飲食業の人だけが読むのはちょっともったいないです。インターネットでの新しいサービスなんかを考えている人もすごく参考になると思います。

ちなみにこの本の編集者が、僕の『バーのマスターはなぜネクタイをしているのか』と『バーのマスターは「おかわり」をすすめない』と同じ編集者なんです。

で、ひみつ堂の森西さんに、僕の本を2冊渡して、読んで参考にしてもらって、この『ひみつ堂のヒミツ』を書いたそうです。

ですから、僕の本を読んだ人は、さらに面白く読めるかもしれません。

というわけで、この本も決して、PRとかステマではなくて、読んですごく面白かったので、本気でオススメします。「何かアイディアを具体的に形にしたい人」は是非! → https://goo.gl/72Rk3y

#コラム

色んな質問に答えた本が出来ました。『ちょっと困っている貴女へ バーのマスターからの47の返信』 https://goo.gl/dZ32IW 立ち読みできます!
https://goo.gl/Q6mRvL

bar bossaに行ってみたいと思ってくれている方に「bar bossaってこんなお店です」という文章を書きました。→ https://note.mu/bar_bossa/n/n1fd988c2dfeb

この記事は投げ銭制です。この後、オマケで僕のちょっとした個人的なことをすごく短く書いています(大したこと書いてません)。今日は「すごい悪夢を」です。

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作家は他の本をたくさん読むべきか、と、ひみつ堂のヒミツ

林伸次

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林伸次

渋谷でボサノヴァとワインのバーをやってます。http://www.barbossa.com/  『恋はいつもなにげなく始まってなにげなく終わる。』https://goo.gl/u2Guu1 韓国人ジノンさんとのブログhttps://goo.gl/B9MH6n

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