この世界を肯定することと、紫原明子さんの『家族無計画』のこと

僕は、出来るだけそういう記事は見ないようにしているのですが、やっぱりネットで誰かを誹謗中傷しているのって、目に入ってくるとうんざりしてしまいますよね。

「この人は叩いて良し」という空気になったら、もうひたすら罵り始めるあの雰囲気、とにかく僕は苦手なんです。

決して良い人ぶっているわけではなく、「よくここまで誰かを罵倒することが出来るなあ」って、もうその「負のエネルギー」のようなものが画面のこちら側まで伝わってきて、気持ち悪くなってくるんです。

まあそういう時代なんですよね。

でも、そんな「負の空気」をひっくり返す、すごく読後感の心地よい本を読みました。

柴原明子さんの『家族無計画』です。→ https://goo.gl/aumPbA

明子さんは「とりあえず一旦この世界を肯定する」というところからいつも始めます。

元夫の生き方のこと、最初の出産のとまどいのこと、子育てで起こる様々なこと、ホームパーティでいろんな人に出会うこと、セックスレスのこと、離婚のこと、シングルマザーのこと、不倫をされること、婚活のこと、女性の性欲のこと。

まあ、とにかく現代女性がどれかはひとつ悩んだことがあるはずという「たくさんのこと、それもすごく大変だったろうなあという状況のこと」を明子さんは全部、経験して、そして「私の子育ては間違ってなかった」とか「彼女たちが大好きだ」とひとつひとつ肯定していきます。

例えば明子さんは元夫に「不倫をされている」わけですが、本来なら当事者として徹底的に相手の女性や元夫を罵倒してもいいはずなのに、「まあみんなのそれぞれの気持ちもわかるなあ。不倫って楽しいのもわかるなあ」というスタンスから、この「大きな大きな問題」を取り扱います。

そして、その問題を取り扱うときに「じゃあ私たちが牛を食べているこの状況はどうだ?」という絶妙にわかりやすい「例え話」を挿入してきてさらなる展開に向かいます。

そして明子さんはこの「不倫をされる問題」を見事にまとめるわけですが、ここはこの本の「いくつかのキモのうちのひとつ」なので、是非、読んでみてください。

「不倫をされている本妻」の側から、こんなに「納得のいく回答」が出てくるのは本当に明子さんの「このこんがらがったわかりにくい世界をとりあえず一旦肯定する力」と「すべての人たちに共感する力」があるからだと思います。

          ※

そうなんです。明子さんの「他の誰にも負けない特殊な能力」は「全ての人の気持ちになって考えてみる」という姿勢なんです。

とにかくこの本は最初から最後まで「その姿勢」が貫かれています。

明子さんがこの本で読者に伝えたかったことは、「みんなの気持ちを少しでも理解しようとすれば、何かそこに良い解決法が見つかって、世界は、そして人生は少しづつだけど良くなっていく」ということだと思いました。

          ※

明子さんの息子さんと娘さん、大きくなって、この「ママが色々と悩んで書いた一冊目の本」を読んだら、どう感じるでしょう。

「ママの生き方ってカッコいいなあ」って思うでしょうね。そして、僕が感じたように「もっと世界や人生を肯定的に見よう」って感じるはずです。

そしてたぶん息子さんと娘さんは、明子さんにこう言うはずです。「ママの第2の人生ってこの本から始まったんだね」

#コラム

僕のcakesの連載をまとめた恋愛本でてます。「ワイングラスのむこう側」http://goo.gl/P2k1VA

この記事は投げ銭制です。この後、オマケで僕のちょっとした個人的なことをすごく短く書いています。今日は「今まで住んだ街ベスト3」です。

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