ハートカクテルと国境の南、太陽の西と芝浜

※土曜日は読む人が激減することが判明したので個人的な話を。

とりあえず、今まで書きためてきた超短編の恋愛小説を、それぞれ繋げて、ちょっとした長さの小説に書き直そうかなと考えたんですね。

で、設定をどうしようかなと悩みまして、元編集者の20年来の友人が、「カウンターに座っているお客が主人公が良いよ。で、いつもそのバーで飲んでいて、マスターとも色々と話して、いろんなお客が来て、そしてそのお客の一人から恋愛の話を聞くっていうのが良い」ってアドバイスをくれたんです。

例えば「作家志望の僕」がカウンターでいて、「僕」はいつもジントニックを飲んでいて、常連の「渡辺さん」とかがいてっていう設定で、そしてそこに「恋の悩みを抱えた女性が来店」って感じです。

それ、かなり自由度がありますよね。「主人公の僕」は、違うお店にもいけるし、違う場所でその他のお客さまにも会えるし、物語がふくらみます。

で、妻に「そういう設定にしようかなと思って」って話したら、「うーん、なんかバブルっぽい」って言うんです。

確かに考えてみたら「ハートカクテル」みたいなんですよね。

「マスターは僕のためにとっておきのピッツアを作ってくれた」って感じです。うん、バブルっぽいです。狙ってあえて「1980年代が舞台」なら良いのですが、僕は「LINE」とか「携帯電話」を登場させる予定なので、ちょっと違います。

それでまあ、やっぱりバーテンダーを主人公にしようかな、それが一番、無理がないなあというところにたどり着きました。

          ※

で、書き出しと文体をどうしようかなと思って、いろんな有名な作家の小説をたくさんチェックしてみたんですね。

→すいません。僕、すぐリサーチするんです。自分の心の奥底から湧き出てくる自分だけの「文体」みたいなの、どこにもないんです。

で、「確か村上春樹の『国境の南、太陽の西』ってバーの描写が多かったなあ。ちょっと読みなおしてみようかな」って思って、久しぶりに読んでみたんです。

そしたら、村上春樹って本当に文章が「上手い」んですね。ノーベル文学賞か? とか言われているくらいだから、上手いってあたりまえなんですが、改めてそういう「文章をチェックする」というつもりで読んでみたら、ホント、読者を物語に引きずり込む文体と言いますか、やっぱりすごいんだなあと思って、ついつい文章をチェックするだけのつもりだったのに、読み込んでしまったんです。

→ちなみに村上春樹の文体が話題になるとき、必ず「やれやれ」とか「結局のところ僕たちにとって」とか、そういう「枝葉」が話題になりますが、彼の文体の本質は「物語に引きずり込むリズムとか波」だと僕は認識しています。

ところで、『国境の南、太陽の西』って読んだことありますか?

僕、発売当時に読んだのですが、「全然面白くない」って感じまして、その作品のあたりから、「村上春樹離れ」が始まったんです。

確か、当時も評判が良くなかったと記憶しています。

         ※

で、20年ぶり以上に今回が2回目で読んだのですが、すごく面白いんです。

「どうしてなんだろう」と思ったら、村上春樹、この小説を43歳の時に出しているんです。今の僕と結構近いんです。

で、「わかるなあ」ってことがたくさん書かれていまして、たぶん若い頃だったらこういう「お金やビジネスのこと」とか「妻の父親のこと」とか「昔、好きだった人」とかの話って本当につまんなかっただろうなあって思うんです。

「年をとったからこそわかる作品」っていうのに最近出会うのがとても嬉しくなっていまして、ブロッサム・ディアリーもそうですが、落語もそうなんです。

妻と妻の落語友達の須田さんは「ええ? 『芝浜』好きなの?」って笑うのですが、落語の『芝浜』のあの「作り込みすぎているいかにも人が考えて作った物語」っていうちょっとした「不格好さ」に「美しさ」を感じているんです。

そうなんです。「不格好な生き方」に「人間の美しさ」を感じるようになったんですよねえ。

いやはや、年をとらないとわからないことってあるものなんですね。

         ※

ちなみに「バーで恋愛を語る話をまとめた小説」は夏までに書き上げます。

→こうやって宣言して背水の陣にしないと、僕、途中で飽きてしまって書かないんです。

乞うご期待です。

僕のcakesの連載をまとめた恋愛本でてます。「ワイングラスのむこう側」http://goo.gl/P2k1VA

この記事は投げ銭制です。この後、オマケで僕のちょっとした個人的なことをすごく短く書いています。今日は「僕の好きなカクテルベスト3」です。

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ハートカクテルと国境の南、太陽の西と芝浜

林伸次

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林伸次