シー・ラブズ・ユー

#小説 #超短編小説

街を歩いていると「魔法使い養成講座。素人大歓迎」という看板をみつけた。

なんだか怪しそうだけど、もし魔法使いになれたら夢がかなえられると思った僕は扉をノックした。

「こんにちは。入り口の看板をみたんですけど…」

「いらっしゃい」

「あの、魔法使いになりたいんですけど…」

「では、まず最初に魔法使いになりたい動機を聞かせてもらおうかな。大金持ちとか世界征服とか…」

「片思いの彼女を僕の方に振り向かせたいんです」

「なるほど。恋愛操作か。人の感情を操るのは意外と難しいぞ。頑張れるか?」

「はい。彼女を手に入れるためなら何でもします」

「よし、じゃあ今から特訓だ」

そんな風にして僕の魔法使いへの道が始まった。

最初はホウキに乗るところから始まって、空間移動や以心伝心、時間操作なんてものも出来るようになった。

人の心の中はやっぱり難しかったけど、ついに人の夢が見れるようになり、感情を操作できるようになった。

僕は魔法使いの先生にお礼を言い、彼女の夢の中に急いだ。

すると彼女は僕とは違う男性に片思いで苦しんでいることが判明した。

僕は悩んだ末に、彼女の夢からその彼の夢へと移り、彼の感情を操作して彼女を恋するように仕組んだ。

次の日曜日、ホウキに乗って空を散歩していたら彼女が彼と楽しそうに歩いているのが見えた。

僕は涙の止め方を魔法使い養成講座で教えてもらうのを忘れていたことに気づいた。

9月9日に僕の新刊が出ます。『バーのマスターは「おかわり」をすすめない 飲食店経営がいつだってこんなに楽しい理由』 https://goo.gl/oACxGp

この記事は投げ銭制です。この後、オマケでこの話を書いた経緯を短く書いています。

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