物件(入れ物)が先かやりたい料理(コンテンツ)が先か

妻が「物件」がすごく好きなんですね。

散歩しててマンションとか中古の家が売り出しに出ていると、すぐに反応して、「そうかあ。この辺だとこの間取りでこんな感じで8千万円かあ」って感じで、全く家を買う予定なんてないのに、チェックするんです。

あるいは誰かのお家にお呼ばれしたら、僕は置いてあるレコードや本、そこのご夫婦の思い出の写真なんかを見るのですが、妻は間取りとか近所の環境とか、キッチンの配置やトイレなんかを一人でチェックしているんです。

そんな話をあるお客さまにすると、「私も間取り大好き!」とのことで、例えばお屋敷街とか歩いていて、すごく素敵な邸宅があると、その場でiPhoneを取り出して、Googleの衛星写真を開いて、その邸宅の庭がどんな風になっているのかチェックするそうです。すごいですよね。

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今のバル・ブームの引き金となった三鷹バルはご存知ですか?

普通は誰も見向きもしないような物件で、絶妙な場所にあり、内装もすごく良いし、想像するにすごく家賃も安そうなんです。

僕はそこのオーナーの一瀬さんのことを「物件探しの魔術師」と呼んでいまして、本当に面白い物件を探しだしてきて、その場所の良さを最大限に活用したお店を作り出す人なんです。

その一瀬さんが以前、bar bossaに来店しました。普通、bar bossaにお客さまが来ると、「レコードかけてるんですね」とか「ワインはこういうの置いてるんですね」とか「え、カレーやってるんですか」とか、そういう箇所に目を向けるんですね。

でも、一瀬さん、「場所が門を開けて裏に回らなきゃいけない」っていうのと「お客さまがカウンターの席に座った向かい側に窓があって外を眺めながらお酒が飲める」っていう、その2カ所の話ばっかりされるんです。

で、ホント、物件が好きなんだなあと思って、「お店を新しく作る時って、こんなお店を作ろうかなあっていうアイディアが先ですか? それともこの物件面白いなあ、が先ですか?」って質問したら、「物件が先」なんだそうです。まず「面白い物件」に出会ってから、その物件を見て、「じゃあこんなお店にしようかなあ、スタッフはこういう人で食事はこんな感じで」と考えるんだそうです。

すごいですよね。

普通は「こんな感じのカフェをやりたいなあ」と思って、そのアイディアにあう物件を探すんですね。で、色々と条件を見て、「じゃあここにしよう」って決めるんです。そしてそのやり方だと、ほとんどの場合、「早くお店を出したい」という気持ちが先走って、考えていたアイディアと目の前にある物件とのズレが生じるんです。

そして、オフィス街なのに下北風カフェをやってしまって失敗したり、学生街なのに高い価格設定のバーを始めてしまって失敗するんです。

でも、「物件」が先だと、そこから考えるので、「ズレ」が生じないですよね。

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僕たちはついつい、「美味しいものを適切な価格で出していたらお客さまは来る」とか「良いスタッフと良い雰囲気の店づくりをすればお客さまは集まってくる」と考えがちですが、本当は「その物件を見極めて、その物件の良さを最大限に引き出せるような店づくり」をしなければならないんだなあ、と思いました。

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そしてそれはこういう意味もあると思うんです。普通は「コンテンツ」とか「コンセプト」とか「やりたいこと」を重視しますよね。でも「入れ物」を一番に考えて、その入れ物に一番あうものを後から考えるのも必要なんですね。組織とか人間関係とかもそうかもしれないなあと思ったところです。

#コラム

色んな質問に答えた本が出来ました。『ちょっと困っている貴女へ バーのマスターからの47の返信』 https://goo.gl/dZ32IW 立ち読みできます!https://goo.gl/Q6mRvL

bar bossaに行ってみたいと思ってくれている方に「bar bossaってこんなお店です」という文章を書きました。→ https://note.mu/bar_bossa/n/n1fd988c2dfeb

この記事は投げ銭制です。この後、オマケで僕のちょっとした個人的なことをすごく短く書いています(大したこと書いてません)。今日は「昨日は大雨だったのに」です。

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物件(入れ物)が先かやりたい料理(コンテンツ)が先か

林伸次

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林伸次