リニューアルして卒業させる勇気

「飲食店の寿命は6年」という説があるんですね。

パンケーキでも、立ち飲みバルでも、スープカレーでもなんでも良いのですが、「え! それ面白そう! 行ってみよう!」って思われて、みんなが通ってくれるのって6年くらいが限度なんです。

まあ6年くらい経ってしまえば、「ああ、そういうの流行ってたよね。なんか懐かしいなあ」って気持ちになるんです。

それで大手の飲食の会社では、大体そのくらいでお金がまわるように計算して、「じゃあ次は○○海産かな」とか「○○農場とかどうかな」とかって感じで、お店を潰しては新しくしてっていうのを繰り返すんですね。

僕たちのような小さいお店は、資金的な余裕もないし、例えばフレンチでしか修行をしていないので、突然和食をやろうなんてことも出来なくて、まああまり潰して新しいお店を、なんてことは出来ません。

それでまあ、ちょっとづつ「売り上げ」が減って、「まあここらで閉めようか」って感じになってしまうんですね。

例えば、bar bossaって元々「ワインバー」っていうカテゴリーのお店なんですね。これ、1990年代後半から2000年代初頭にすごく流行ったんです。もうどの街に行っても、ワインバーがあって、カウンターにイベリコ豚の生ハムの骨付きがあって、リーデルのグラスをグルグル回して、ムートンやサシカイアやオパスワンについて語ってたんです。

もちろん、もうそんなワインバー、ほとんどありません。

 ※

飲食店のお客様って、3種類いまして。

①話題になっているから1回だけ行ってみる

ほとんどの流行っている飲食店のお客様がここになります。以前はそれほどでもなかったと思いますが、今は「SNSに投稿する」という目的があるので、この人たちすごく多いです。正直に言いますと、僕も「話題だから1回だけ行ってみる」ってすごくよくあります。

②なんだかすごく気に入って半年間くらい立て続けに通うけど、他に好きなお店が出来たらそちらに通い始める

あなたもありませんか? 「あのお店、すごく良い!」ってツボにはまってしまって、しょっちゅう通うんだけど、やがて行かなくなるってこと。まあこれ、普通です。でもこの人たちをどれだけ増やすかが店の経営のポイントだったりします。

③お店のスタッフや立地や価格や雰囲気すべてを気に入って、ずっと通い続ける

本当にありがたい人たちです。いわゆる「常連さん」です。

普通の飲食店は、この3種類の人たちだけなので、5年、6年経ってくると、新鮮味がなくなるから、①と②のお客様が来なくなって、③のお客様だけが残って、売り上げが落ちて閉める、というわけです(会員制とかライブのお店とか観光地とか違うやり方はたくさんあります)。

 ※

でも、この③のお客様だけで経営を続けているお店って実はすごく多いんです。

いわゆる私鉄沿線のマイナーな駅にあるスナックとか居酒屋とかバーとか喫茶店って、この③の人たちをたくさん抱えていて、毎日同じ顔ぶれの人たちがカウンターにいて、経営がまわります。

でもですね、このやり方だと「新しい若いお客様」が入ってこれないので、みんながちょっとづつ歳を重ねて飲めなくなったり、転勤や家庭の事情で来れなくなったりして、ちょっとづつお客様が減って、閉店ってことよくあるんです。

はい、常連さんにたよる経営って実はリスキーなんです。

そのためには、常連さんに嫌われても良いから、おもいっきり改装したり、メニューやコンセプトを変えたりして、新しいお客さんを呼び込まなきゃいけないことってあるんです。

やっぱり①や②のお客様をドンドン取り込んで、お店の新陳代謝を高めなきゃならないんです。

でもリニューアルって、③の人たちにすごく嫌われます。

bar bossa、実は20年の間に、営業時間やコンセプトや内装なんかを、10回くらいは変えているんですね。

まあ常連さんに嫌がられるんです。「前の方が良かった。あのメニュー、戻してくれ。営業時間、元に戻してくれ。煙草吸えないなら来ない」ってしょっちゅう言われるんです。

でも、これをやるしかないんですよね。ってことを考えていたら、先日、古賀史健さんが、noteでこんなことを書いていました。

むかし、ある専門誌(当時数十万部の発行部数を誇っていた雑誌)の編集長さんに取材したことがあるのですが、彼は何年かに一度誌面を大幅リニューアルし、古い読者の「卒業」を促すのだとおっしゃっていました。そうしないと専門誌のコミュニティは閉鎖的な「村」になってしまって、あたらしい読者が入ってこなくなる。あたらしい編集部員も育たず、やがて雑誌全体が小言めいた年寄りの集まりになって衰退の一途をたどる。だから誌面のリニューアルと「いまさらその話?」的な内容のローコンテクスト化で、雑誌全体にあたらしい風を入れるのだと。

なるほど「卒業」させるんですね。確かに、常連だけがはびこる場所って雑誌もお店もどこでも空気が淀んでしまって、新しい人が入って来れないですよね。いやあ、勇気がいりますが、そうしないと経営って続かないです。

この「リニューアルして常連を卒業させる」って発想、雑誌やお店だけでもないですね。色んな会社や組織やサークル、どこにでもあてはまるのではないでしょうか。

リニューアル、良いですよ。あなたも是非!

#コラム

定額制日記始めました。

bar bossaに行ってみたいと思ってくれている方に「bar bossaってこんなお店です」という文章を書きました。 

この記事は投げ銭制です。面白かったなと思った方は下をクリックしていただけると嬉しいです。おまけでちょっとした個人的なことをほんと短く書いています(大した事書いてません)。今日は「GW後は」です。

この続きをみるには

この続き:81文字

リニューアルして卒業させる勇気

林伸次

100円

この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?気軽にクリエイターを支援できます。

note.user.nickname || note.user.urlname

サポートしたいと思ってくれた方、『恋はいつもなにげなく始まってなにげなく終わる。』を買っていただいた方が嬉しいです。それはもう持ってる、という方、お友達にプレゼントとかいかがでしょうか。

嬉しいです! ええと、シェアとかしていただけたらもっと嬉しいです…
385

林伸次

#編集 #ライター 記事まとめ

編集、ライター、コンテンツ、メディアなどに関する記事をまとめていきます。
6つのマガジンに含まれています