さよならの国5

街を歩いているとギターの音が聞こえてきた。

舗道に座って弾いている。黒いハットをかぶっていて、顔がよく見えない。黒いマントに下は灰色のセーターを着ている。

近寄ると歌を歌い始めた。

「ページをめくると物語が始まる 

手紙を書くと終わりが始まる

夜空を見上げるともう一人の自分を思い出す

朝が来ると魔法が消える

時計を見ると別れが近づく

窓を閉めると声が届かない

扉を開けると全てが変わる」

歌が終わって、僕は大きな拍手をしながらこう言った。

「面白い歌ですね。レコードを出したり、ライブをしたりはしてないんですか?」

「この国では人と人は一回しか会えないから、録音もコンサートもないんだ。僕と君はもう会えない。だからこの演奏も最初で最後だ」

「そうか。そうですね」

「でもこれで最後だって思うとみんな大切に聞いてくれる」

「そうかもね」

そして彼はギターをおいて頭をさげた。

#小説 #さよならの国

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この記事は投げ銭制です。この後、オマケでこの小説のことをすごく短く書いています。

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