飲食業の原価率と鳥の胸肉の話

いわゆる屋台的なお店って、原価率がすごく低いってご存じでしょうか?

例えばクレープって小麦粉と水に、バナナとかクリームとかチョコですよね。すごく儲かることになってるんです。

お好み焼きやたこ焼きといった「粉もの」はもちろん、小麦粉が基本です。

かき氷は氷とシロップだけですし、綿菓子とか飴といったジャンルも基本はお砂糖です。

あるいは「本来は捨ててたり、家畜の餌や肥料に回していたもの」の価値をひっくり返して、「あえてこういう風に食べてみたら良いんじゃない?」と提案する料理や商品を開発するというのもあります。

モツ煮込みやホルモン焼き、あるいはオカラを使ったドーナッツといったあたりがわかりやすいでしょうか。

飲食業って、そういう風に「原価率がすごく低いのにみなさんが楽しくお金を払ってくれる商品を提案できると勝ち」という側面があります。

それでまず厨房に入ってお店のメニューを考えるときには「すごく安くてどんな季節にでもある食材をどうやって美味しい料理に出来るか」というのを誰もが念頭におきます。

すごく安くていつでもあるもの。例えばモヤシとジャガイモが思いつきます。

ポテトフライってドサっと盛られてることありますよね。安くてお腹がいっぱいになります。

大衆居酒屋の定番ってポテトサラダです。あれも原価が低いのに満足感がある料理なんです。

モヤシもよく多用されます。ラーメンの上にこれでもかっていうくらいのせていることもありますし、安くて量が多い定食屋さんの炒め物にはかなりモヤシが投入されています。

ええと、別にだましているわけではないんです。

すごく安い食材を見つけてきて、お客さまがじゅうぶん満足してしてくれる料理を開発するのが「飲食業を営む面白さ」でもあるわけなんです。

そしてその料理がメディアで取り上げられて、来店するお客さまの全員がその料理を注文してくれたりすると、「よっしゃー!」って気持ちになるんです。

たまに週末のお昼のテレビで「このお店のメロンパンが絶品なんです。ほらこんなに行列が。ちょっと並んでるお客さまに聞いてみましょうか。どこから来ましたか? 九州から!」とかやってると、「うわー、この200円のメロンパン、原価いくらだろう? 10円くらいかなあ…。ということはこの人の良さそうなオーナーさん、年収2000万円くらいかなあ」って飲食業の人間は全員思っているというわけなんです。

そして、たぶん、今、厨房でメニューを考えている人たち全員が何か出来ないかなと一番最初に思うのが「鶏の胸肉」です。

鶏の胸肉ってすごく安いんです。この間は近所のオーゼキで100グラム40円でした。

でも鶏の胸肉ってまだ誰も「これ!」っていう料理を思いついていないんです。

普通にフライパンで焼くと、まずパサパサで全く美味しくないです。そして肉のうま味があまりありません。

カレーみたいな味の濃い煮込み料理に投入するというのが比較的、無難な調理法でしょうか。

蒸すと結構、いけます。バンバンジーがその代表例でして、さすが中国人、長い歴史の間に誰か天才が思いついたのでしょう。尊敬してしまいます。

「鶏の胸肉」をメインで使った商品。試してないのですが、こんな感じでしょうか。

●一口大に切って、味噌や麹や梅なんかを塗りこんで揚げて、屋台や可愛い軽トラなんかでスナック感覚で売る。

●蒸してナンプラーやパクチーを使ってご飯の上にのせて東南アジア風丼にして、エスニック丼店の目玉商品にする。

●ミンチにしてピクルスを刻んだものやスパイスとこねてハンバーグにして、マヨネーズと照り焼きソースを塗ってパンに挟んでB級グルメ絶品サンドイッチにして、サンドイッチ店の目玉商品にする。

たぶんどれも本当に作ってみたら「美味しい! 最高!」って感じじゃないと思います。というのは、僕が今思いついたくらいだから、みんな既に試してるはずなんです。

でも、こういう発想の仕方で何か「これ!」っていうすごく美味しい商品や料理を思いつけば、その人はその料理がメインのチェーン店を広げて、それだけで一生、豊かに暮らせます。

それはみんなわかっているのですが、難しいんですよね。鶏の胸肉。

#コラム

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