なぜレコード屋をあきらめて、バーをやろうと思ったのか

先日、インタビューを受けてて、「どうしてレコード屋さんをあきらめて、バーをやろうと思ったんですか?」と質問されました。今日はそんな話をしてみます。

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僕はレコードとかCDがすごく好きでして、20歳くらいの時に「レコード屋やろうかな」と思って、ディスキャットという高田馬場の中古新品のCDLD店とWAVEというCD店とレコファンという中古新品のCDLP店で働いたんですね。

そこで学んだことは、音楽ソフト店って「豊富な在庫」が全てなんだなってことでした。

消費者である僕のような「音楽大好き、とにかくたくさんの音楽が聞きたい」って人にとっては、もう見たことないような音楽ソフトがたくさんあるというのが「一番魅力的な店舗」なんだなってことなんです。

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ところで、新品のCDって仕入れ値が75%~80%なんです。店頭で2000円で売っているCDは、仕入れ値が1500円~1600円というわけです。

1枚売れても、儲けは500円~400円なんです。

ということは、また新しくCDを1枚仕入れるには3枚から4枚は売らなきゃいけないんです。結構厳しいのはわかりますよね。

だからタワーレコードみたいな大きくてすごく在庫がある店舗は、例えばAKBみたいな店頭でその日に何百枚という単位で売れるヒット商品がないと成り立たないんです。

ですので、儲けが大きい中古CDや中古LPを考えますよね。

中古の仕入れ値は20~30%なんですね。儲けは結構大きいんです。

でも想像していただければおわかりかと思うのですが、「みんなが聞かなくなって処分したいCDやLPって、他の人もそんなには欲しくない」んです。

みんなが欲しがっているCDやLPばかり買い取ることが出きれば問題はないのですが、「これはもう売れないだろう」って感じのソフトをみなさん普通は持ってきます。今だと例えばAKBの握手券が抜き取られたCDって感じです。

でも、中古市場って面白いのが、そういう「まさか売れない」っていう商品が、何十年もすると「すごく高い商品」に化けることがあるんです。

最近のわかりやすいところだと、テレサ・テンのレコードって中国人が何万円も出して買ってくれるんですね。でも、もちろん30年前はテレサ・テンは「まさか売れないレコード」だったんです。

そういう「売れるか売れないかわからない商品」も全部在庫で持たなきゃいけないんです。そして在庫にはもちろん毎年、税金がかかります。

で、CDやLPを売るのってすごく資金力が必要なんだなあ、あるいは自分が好きな音楽ソフトだけを売るって言うのって「すごく難しい」んだなあってことがわかったんですね。

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それに比べて「飲食店」は在庫をそんなに抱えなくて良い、っていうのと、自分の好きなものを好きなように仕入れることが出きるし、仕入れ値も30%で、儲けは大きいっていうことに気がついたんです。

本当はこんな単純ではないのですが、話をわかりやすくするために「お寿司屋さん」で考えてみます。

お寿司屋さんは、お店にお酒とお米と調味料さえあれば、後は毎日の売り上げで回せるんです。

例えば、2万円を握りしめて、朝、魚市場に行きますよね。で、そこでとれたばかりの鯛や鮪やタコや鰯なんかを2万円分買ってきて、お寿司にしてお客様に出すと、その日の売り上げは10万円いくんです。

で、家賃や光熱費や人件費やお米なんかのお金の5万円はとっておいて、明日の魚の仕入れの2万円は残しておいたとしても、手元にその日に使って良いお金が3万円くらいはあるというわけです。

あと飲食店は個人店であればあるほど、お客様と近くあればあるほど、「今日は鰯がオススメだよ」って伝えてそれを全部さばくことが可能なんです。

それがCD店や、あるいはアパレルならそういうのかなり難しいですよね。

アパレルなんて特に「今期は赤の帽子が売れるに違いない」って見込んで、多量に仕入れて「全く売れない」なんて現象がたまにありますよね。さらに「今、黄色い帽子が他店では売れまくっているのに、うちのお店には全く在庫がない。発注しても入ってくるのは1週間先でその頃はみんな黄色い帽子には飽きてるかも」なんてこともありますよね。

飲食業の場合も多少はそういうことってありますが、でもそんなにはないんです。仕入れたらまず売れるし、「今日は鰯は終わっちゃったから秋刀魚で良いですか」って言えば、ほとんどのお客様は「良いよ」って言ってくれるし、「鰯がないんなら帰る」なんて言わないんです。

そして「そんなに在庫を抱えなくて良い」って精神的にも安心できるんです。

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全部が売れる商品を計算して、完璧にセレクトして用意して、完全にうまく回すのが「物販店」の面白さだとは思うのですが、僕には性格的には無理だろうなあと気がついたので、飲食店にしようと思いました。

もちろん、本当はこういう単純な話ではないのですが、基本的に「在庫を抱える」、「その日に買ってきた物を調理してその日に出す」というのの違いが僕は後者の方が向いている気がして、飲食店を選びました。お店をやりたいという方、参考にしてみてください。

#コラム

飲食店って本当に面白いなあって感じの本を出しました。『バーのマスターは「おかわり」をすすめない 飲食店経営がいつだってこんなに楽しい理由』 https://goo.gl/oACxGp

僕が選曲したCDです。Happiness Played In The Bar -バーで聴く幸せ- compiled by bar bossa → https://goo.gl/tOKcGu

iTunesでも配信しています。→ https://goo.gl/9QJywf

bar bossaに行ってみたいと思ってくれている方に「bar bossaってこんなお店です」という文章を書きました。→ https://note.mu/bar_bossa/n/n1fd988c2dfeb

この記事は投げ銭制です。この後、オマケで僕のちょっとした個人的なことをすごく短く書いています(大したこと書いてません)。今日は「お店の暖房機が」です。

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なぜレコード屋をあきらめて、バーをやろうと思ったのか

林伸次

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林伸次

渋谷でボサノヴァとワインのバーをやってます。http://www.barbossa.com/  『恋はいつもなにげなく始まってなにげなく終わる。』https://goo.gl/u2Guu1 韓国人ジノンさんとのブログhttps://goo.gl/B9MH6n

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