「水で良いですのこと、どう思う?」に答えました。

※水曜日は質問に答えています。

【質問】
ここ最近、数人の飲食同業者から、「今、飲み物は水でいいですっていうのが困る話が話題になっているじゃないですか。あれってどう思います?」って言われたので、その質問に答えます。

【答え】
まず「昔はそういうお客様や、そういう問題ってめったになかったのに、どうして最近はそういうケースが多いのか」という問題について考えます。

これは「年長者が若い人に教えないから」、これが一番の原因だと思います。

僕がバーテンダー修行を始めた22年前は、会社の上司とかが若い人を連れてきて、

「バーはね、チャージって言うのがあるから。ほら、何にも頼んでいないのに今、お通しが出てきただろ。これがこういうお店では500円くらいするから。まあ銀座だったら2000円くらいかな。

で、注文は『ウイスキーの水割り』っておまえが言うだろ。で、『ウイスキーは何にしますか?』って聞かれたら『何でもいいです』って言うとすごく高いウイスキーを出すお店もあるから、例えば『バランタインでお願いします』って知っている安いのを言うか、『そんなに高くないので飲みやすい何かオススメのウイスキーはありますか』って言うと良いんだよ」

とかって感じで、ひとつひとつ教えるってことがよくあったんです。

そういう感じで、昔は居酒屋にいって、「飲み物は水でいいです」って誰か若い人が答えたりしたら、年長者が「おまえそんな野暮なこと言うなよ。こういうお店ではビールとかレモンサワーとか、飲めなかったらウーロン茶とかを頼んで、料理にあわせるものなんだよ」って感じで言ってたと思うんです。

それが今はもうないだけなんだと思います。

だから本当に僕ら年長者がすべきなのは、「若い人をお寿司屋さんに連れて行って、おごって、そして食べ方を教える」とか「バーに若い人を連れて行って、バーのマスターに『彼らうちの会社の若手だから、マスター、彼らがまた来たらよろしくね』って紹介する」とか、そういうことだと思うんです。

 ※

でもまあ、やっぱり時代が変わったんだなと思います。

例えば昔は女性がグラスが空になったら、男性が「何か飲む?」って聞くのが本当に常識だったのですが、最近はほとんどの男性が聞かないんです。

「お酒をすすめる」っていう行為がもしかして「下心がある」というイメージに変わってしまったのかなあ、それとも常識を知らないだけかなあ、とか色々と思うのですが、

でもこういう時代の流れってしかたないなあ、と長年この仕事をやってきて僕はいつも思います。

常識って変わっていくものなんです。

→話はそれますが、bar bossaを開店した20年前は「チャージ」って普通だったので最初500円いただいてました。でも時代の流れで「チャージはやめた方がいいな。みんなお通し嫌いなんだな」と感じてチャージはやめました。あるいは「バーで喫煙」は普通だったんです。でも時代の流れで「禁煙」にしました。そういう常識と思っていることって時代で変わっていきます。

 ※

そしてこの問題、お客様もなんとなく「お店を見てからドリンクを頼むべきかどうかを考えている」と思います。

例えば「ジーンズやスニーカーはお断りのレストラン」で、みんながビシッとしていたら、そこでは「水でいいです」って誰も言わないと思うんです。

あるいは僕らも吉野家に行ったら、ドリンクは頼まないで水だけで食事をすませますよね。

そういう風にお客様も、お店を見て、「ここは水でいいかな」とか「ここは料理にあわせてワインを頼むべきだな」とかって考えて言ってるとは思うんです。

だからお店側も「今日はこんな日本酒が入りました。東京ではめったに飲めません。しめ鯖とあわせると美味しいですよ。是非、お試し下さい」「ノンアルコールでしたら、こういうフルーツを使ったカクテルを始めました」「お肉でしたら是非この赤ワインとあわせてみてください」って感じで、「ああ、このお店は料理と飲み物をあわせるとすごく美味しいんだなあ。楽しそうだなあ」とかってお客様に感じさせるような、そういう「メニューの提案」も必要なのかなって思います。

「お客さまはそんなにお金は使いたくない」と「お店はお客様にお金を使ってほしい」というそれぞれの気持ちがすれ違うのって当然だと思うんですね。

だったらお店側は「このお店でお金を使うとすごく楽しい!」って感じていただけるような「提案」や「メニュー構成」を用意するしかないのかなと思います。

 ※

「言葉」とか「メディア」とか「飲食店での振る舞い方」とか、そういうのってドンドン時代で変わっていくし、仕方ないなといつも僕は思います。

「水で良いです」の若い人が増えているってことは、そういう時代になってきたんだと思います。

じゃあ、どうやってお客様が「このお店は料理も美味しいけど、ドリンクもすごく美味しいのを揃えているからドリンクを頼まないとせっかく来たのに損だよなあ」って思わせるか、それを考えるのもこういう時代に生き残れる飲食店なのかな、とも思います。

#コラム

※質問受け付けております。makijobim★yahoo.co.jp(★を@に変えてください)にメールしてください。質問の文章に個人情報をたくさん書かれる方がたまにいらっしゃいますが、「コピペして公開可能な文章」でお願いいたします。長文だと読者が読まないことがあるので、出来れば500字以内でお願いします。

色んな質問に答えた本が出来ました。『ちょっと困っている貴女へ バーのマスターからの47の返信』 https://goo.gl/dZ32IW 立ち読みできます!
https://goo.gl/Q6mRvL

bar bossaに行ってみたいと思ってくれている方に「bar bossaってこんなお店です」という文章を書きました。→ https://note.mu/bar_bossa/n/n1fd988c2dfeb

この記事は投げ銭制です。この後、オマケで僕のちょっとした個人的なことをすごく短く書いています(大したこと書いてません)。今日は「シェイカーをさっそく入れたのですが」です。

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