「させていただく」と「おとつい」

「させていただく」って言葉、ありますよね。

テレビでよく芸能人が「先日、番組で歌わせていただいたこの曲は」とか「僕、この映画に出させていただいたんですけど」とかって感じで使います。

これ、ご存じのようにすごく評判悪いですよね。今、検索してみたのですが、なんだかひどく叩かれています。

僕もこの言葉、気持ち悪いなあと思っていたのですが、あるとき、司馬遼太郎がこの言葉について生前、言及していたことに気が付きまして。

80年代の対談集だったと思うのですが、対談相手が司馬遼太郎に「最近、流行っているあの『させていただきます』ですが、どう思いますか?」みたいなことを言ったんですね。

そしたら司馬遼太郎が「あれは仏教用語なんです。仏様に向かって、食べさせていただきます、歌わせていただきますって言うとるんですわ。そやから、今の若い人は仏教用語を使ってるわけで、それはそれで面白くて良いんとちゃいますか」みたいなことを答えていたんですね(すいません。おもいっきりうろ覚えです。なんか違ってたらすいません…、司馬遼太郎の関西弁も変だったらすいません…)。

この時、司馬遼太郎の「言葉と歴史」に対する姿勢といいますか、「まあ言葉って変わっていくものやし、そういう使い方もありでっしゃろ」みたいな感覚に、カッコいいなあと感じました。

実際には僕は「させていただく」は使っていないのですが、そっちが優勢になってきたら、使わさせていただくかもしれません。そのときはすいません。

 ※

でもホント、言葉って移り変わるものだから、なんとも言えないよなあと思ったことが先日ありまして。

ある方がネット上で「おとつい」って書いてたんですね。僕、その方はてっきり東京の人だと思っていたので、「あれ? おとついって言ってる。この人、関西出身だったんだ」ってびっくりしたんですね。

ええと、ご存じですよね。「一昨日」と書いて、標準語では「おととい」と読むのですが、関西方面では「おとつい」って読むんです。

で、その方に今度会ったら、「関西出身なんですね」って言おうって思ってたんですね。

でも、もしかして「おとつい」が関西の方言っていう情報、間違ってたら恥ずかしいなと思って、その場で検索してみたんです。

そしたら「おとつひ」の方が万葉集にもある言葉なのだそうで、おとついが本当は正しいそうなんです。

でも、関東方面ではこの「おとつい」がなまって、「おととい」と言ってるそうなんです。

だから本来は「おととい」が関東訛りなのですあ、今はもう「おとつい」の方が使っている人が少ないので、そちらの方が「方言」になったというわけらしいんです。

 ※

言葉、何が正解か、何が間違っているか、なかなか難しい問題ですが、まあ色んな状況で時代とともに変わっていくということでしょうか。

#コラム

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この記事は投げ銭制です。この後、オマケで僕のちょっとした個人的なことをすごく短く書いています(大したこと書いてません)。今日は「昨日は落語の後」です。

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