アイル・ネヴァー・フォール・イン・ラブ・アゲイン

#超短編スタンダード曲小説 #会話スケッチ

「もう絶対に恋なんてしない。

失恋したときのあのつらさ、もう何も食べたくないし誰とも話したくないし、仕事も遊びも行きたくない、本当に死ぬことも考えてしまう、あの失恋のつらさを考えてみたら、もう2度と恋なんてしない」と彼女は言った。

「でも恋がうまくいったとき、相手も自分のことを好きだとわかったとき、そして早く会いたい、今すぐ会いたいと思うとき、ずっとずっと朝まで意味のないことを二人で話すとき、キスをするとき、相手を抱きしめるとき、あの喜びに勝るものってないよね。

どんな美味しいものよりも、どんな贅沢よりも、どんな美しい音楽よりも、あの人も自分のことを好きで、そして会ったらお互い見つめ合って、そして笑うあの瞬間の方が素晴らしいと思うんだけど」

「私、思うんだけど、そういうことってめったにないから。

すごくすごく好きになるじゃない。それと同じくらい相手も自分のことを好きになってくれるってもう確率的に本当にありえないくらいめったにないことなの。

ほとんどの恋が、完全な片思いや、私のように勝手な勘違いや思いこみで終わってしまうの。みんなが私が勘違いして舞い上がっていたことを笑ってるんだから。

ほんとめったにお互いが同じくらい最高に最高に好きになって、本当に恋に落ちるなんてこと、まず、ありえないの。

ちょっとこの子と寝てみたいなとか、この人お金持ちだしとか、そういうことでみんなデートしたり付き合ったり結婚したりしてるの。

本当に本当にお互いが大好きで、ずっとずっと朝まで意味のないことを話し続けていても、それだけで楽しくて楽しくてしょうがない、そんな恋なんてめったにないの。そんなのは映画やマンガの中だけ。

だから私はもう2度と恋はしない」と彼女は言った。

確かに彼女の言うとおりで、ほとんどの恋は片思いと失恋で終わるような気がする。

でも、片思いと失恋ってそんなにつらかっただろうか。後になったら、いい思い出になるような気もするのだけど、そんなことを失恋したばかりの彼女に言っても、理解してくれないのはわかっている。

片思いも失恋も、朝までずっとずっと意味のないことを話し合って抱き合っていられる幸せな恋も、どれもがそれぞれに良さがあるような気がするのだけど、それは僕が年をとったせいなのだろうか。


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この記事は投げ銭制です。この後、オマケで僕のちょっとした個人的なことをすごく短く書いています(大したこと書いてません)。今日は「お店が忙しいと」です。

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