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バー・ムーン・ビーチ 月を眺める少年

今夜は誰もお客様が来ない。バーにはそういう夜もある。

私は看板をいれて、灯りを消し、店を閉めた。

気の抜けたクレマン・ド・ロワールをグラスに注ぎ、ぼんやりと飲んでいると、「そうだ、久しぶりに地球を眺めてみよう」と思いついた。

ご存じのように、月から眺める地球はとても美しい。望遠鏡をとりだし、私は地球を眺め始めた。

すると、こちらを望遠鏡で見ている少年と目があった。

私は右手を軽く振ってみると、少年も右手を振って答えてくれた。

少年が紙に何かを書きこちらに見せた。

その紙を、目を凝らして見ると「どうして月にいるの?」とあった。

私も急いで紙に書いて答えた。「地球上で起こる全てがイヤになって月に逃げたんだ」

すると少年がまた紙を見せた。「ならどうして地球を見てるの?」

私は紙を見せ「大人になればわかるよ」と答えた。

少年からの返事はない。

私はこんな質問を少年にする。「どうして君は月を見ているの?」

少年が答えた。「僕はこのままずっと大人になんてなりたくないからだよ」

私は残ったクレマン・ド・ロワールを一気に飲み干した。

#小説

お酒やバーについての僕の本です。『バーのマスターはなぜネクタイをしているのか?』 https://goo.gl/QGdp48

bar bossaに行ってみたいと思ってくれている方に「bar bossaってこんなお店です」という文章を書きました。 

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