孤独になろう

ある音楽コンテンツを扱っている方に聞いたのですが、「このアーティストはこういう人で、こういうのが流行っていて」という情報のページにはすごくアクセスされるらしいんです。

で、その後、そのアーティストの曲が無料なのに、ほとんどの人がその音楽をクリックしないそうなんです。

考えられる理由は「そのアーティストの情報は欲しいのだけど、音そのものを聞く時間がもったいない」のだそうです。

わかりますよね。流行っている本とか映画とかも「大体の情報がわかれば良くて、わざわざ全部読んだり見たりはしようと思わない」ってことよくあります。

5秒くらいの面白動画ならクリックしますが、もうちょっと長いと今は見ないですよね。

そういうのを最近はよく指摘されるらしくて、この現象は要するに「消費者のお金じゃなくて時間を取り合いしている」のだそうです。

時間の取り合いだったら、もう長いコンテンツはダメですよね。

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ところで、どうして僕たちは、以前は「音楽や映画や小説」をあんなに積極的に聞いたり見たり読んだりしていたのでしょうか?

もちろん「すごく面白かったり気持ちよかったりしたから」だとは思うのですが、実は違ったんじゃないか、あれは「あの音楽、良いよね」とか「俺、こんなに映画詳しいよ」とか「自分はあの文学が理解できる」といった、「コミュニケーションのため」だったのでは、と言われているそうなんです。

で、これまた、よく指摘されることですが、スマホになってしまって、結局みんながやっていることは「コンテンツを消費する」のではなくて、「コミュニケーション」だった、人間がしたいのは「コミュニケーションのみ」なのかもってことらしいんです。

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実は僕もコラムみたいなのを書いていて、「どうしてこれが受けて、これが受けないんだろう?」って何度も何度も考えるのですが、「コミュニケーションとか人と人との関係や関わりのこと」だとみんなが真剣に読んでくれるんです。

恋愛なんかはそれの代表ですよね。その恋愛に関しても「どうやったら気持ちが届くか」とか「こういう気持ちは男は嫌がる」とか「彼女の気持ちはどうすればわかるか」とか、そういう全てが「関係性」のことなんです。

マーケティングとかビジネスっぽい文章が受けるなあ、みんなお金が好きなんだなあと思っていたら、必ずしもそういう「お金が全て」じゃなくて、「こういうことをされると人はこう感じるから、こういう風にした方がお客さまが心地よく感じる」とか、そういう「人と人の関係」のことがみんな気になっているようなんです。

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「こういうのを食べて美味しかった」ってインスタグラムとかで見せたくなりますよね。

「こういうレシピを考えました」とか「そのレシピを使って私も作りました」とかってクックパッドで見せたくなりますよね。

なーんだ、やっぱりみんなコミュニケーションをとりたいだけなんですね。

で、どうやったらコミュニケーションがうまくいくか、どうやったら誰かに嫌われないですむか、どうやったら誰かの「好意」が手に入れられるか、それにしか興味がなかったんだ、とやっとわかってきました。

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それでいつも僕は「無人島に行ってこのまま死ぬまで誰とも会わない状況になって、小説は読むか?」とか「人類最後の一人になったとして音楽は聞くか?」って考えるのですが、それはもちろん読んだり聞いたりしますよね。だって「コミュニケーションをとる相手がいない」し、「時間がたっぷりあるから」ですよね。

やっぱり僕らが音楽を聞かなくなってきたり、長い小説を読まなくなってきたのは、「コミュニケーションに時間をとられすぎ」だからなんですね。

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でも考えてみたら、例えば「詩や小説」って「孤独な人の気持ちを支えるもの」ですよね。

ヒリヒリする音楽や映画も、若くて孤独な時に一番心に響きましたよね。

話す友達がいなかったり、失恋したときにこそ、「作品の本当の意味」が理解できましたよね。

音楽や小説や映画をみんなが積極的に消費するようになるには、SNSやメールなんかを出来る限りやめて、孤独になるしかないんですね。

#コラム

僕のcakesの連載をまとめた恋愛本でてます。「ワイングラスのむこう側」http://goo.gl/P2k1VA アマゾン・レビュー書いていただいた方、ありがとうございました。

この記事は投げ銭制です。この後、オマケで僕のちょっとした個人的なことをすごく短く書いています。今日は「bar bossaの裏のあのクラフトビールのお店」です。

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孤独になろう

林伸次

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林伸次

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