ピノ・ノワールとピアノ・エラのこと

※土曜日は読む人が激減することが判明したので個人的な話とピアノ・エラの話を。

僕、家庭で全く決定権がないんです。

例えば休日の過ごし方とかソファーの色、料理やレストランの選択、テレビのチャンネルや親戚との付き合い方まで、全部、妻に決定権があるんです。

でも、どういうわけだか、レストランでワインを頼むときのその決定権だけは僕にあります。

ええと、もちろん僕がワインに詳しいんじゃないんです。妻の方がワインは詳しいのですが、でもレストランでワインを頼むときは僕が選んでも良いって決まっているんです。

というのは僕がピノ・ノワールという品種がすごく好きでして、もちろんワインをサービスする仕事をしているので、リースリングやシラーやカベルネ・フラン、グルナッシュ、サンジョベーゼとどれでも美味しさは理解しているのですが、やっぱりピノ・ノワールにはかなわないって僕は信じているんです。

ちなみにフランスのブルゴーニュという地域でそのピノ・ノワールが栽培されていまして、ブルゴーニュではそのピノ・ノワールという品種、1種だけでワインを作るって決まっています。

他の地域だといろんな品種を混ぜて味をバランス良く、毎年安定したワインに作り手が人為的に操作するのですが、ブルゴーニュの場合はピノ・ノワールという品種だけなので、天候に左右されて、すごく酸っぱかったり、妙にボディがふくよかになったりと、結構難しいワインなんです。

さらに作り手の個性って言うのも大きく左右されまして、淡くて柔らかいワインにする人もいれば、最初はカタいけど、抜栓してしばらく置いたり、熟成させたりすると味が変化するようなワインを作る人もいるし、本当にそれぞれなんです。

ピノ・ノワールっていう単一の品種なのに、作る人が違ったり、その年の雨や日照りの影響があったり、もちろん畑でも違うし、すごく繊細で危ういし、逆に美味しいのに当たると身体がトロケるようなワインも存在します。

そういうところが面白くて好きなので、僕はいつもレストランではピノ・ノワールという品種のワインを注文しています。

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ところで先日、教えてもらったのですが、「ソロ・ピアノと単一品種ピノ・ノワールのワインは似ている」という言葉はご存知でしょうか?

うまいこと言いますよね。

確かにソロ・ピアノもブルゴーニュのピノ・ノワールのように難しいです。

楽器はピアノという同じモノなのに、それを弾く人によって、ダンス・ミュージックのようにグルーヴを感じる音楽を奏でる演奏家もいれば、大きな大きな物語のような曲を紡ぐ演奏家もいます。あるいは天国から降りてくるようなメロディを表現する演奏家もいれば、どうしようもない孤独をピアノの音で抱きしめる演奏家もいます。

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今日と明日、めぐろパーシモンホールで「ザ・ピアノエラ2015」が開催されます。

一昨年、中島ノブユキや矢野顕子の演奏で話題になったのでご存知の方も多いですよね。

今年もすごいですよ。

それでは簡単に演奏家をYouTubeで紹介します(インターネットって便利ですね)。

11月28日(土)

阿部海太郎

蜷川幸雄演出作品の劇音楽を担当しているので有名です。2012年から画家のnakabanと「洋梨の考古学」という室内アンサンブルを始めています。

高木正勝

映像作家でもあり、自作の映像にあわせて演奏するというスタイルで有名で、世界中で演奏しています。映画『バケモノの子』の音楽も手がけています。

haruka nakamura PIANO ENSEMBLE

雨と休日系を代表するピアニストです。現在はARAKI Shinの管弦アレンジや聖歌隊CANTUSが加わったスタイルで話題です。

11月29日(日)

アンドレス・ベエウサエルト

現代のアルゼンチン音楽を代表するアカ・セカ・トリオのピアニストです。今、世界で一番聞いておかなければいけないピアニストと言っても過言ではありません。

ヘニング・シュミート

旧東ドイツ出身のピアニストです。旧共産圏の音楽家ならではの現代音楽、舞台音楽、ジャズ、クラシックと様々な方面で第一線で活躍しています。

タチアナ・パーハ/ヴァルダン・オヴセピアン

タチアナ・パーハは完璧なテクニックのスキャットで有名なブラジル人女性歌手、ヴァルダン・オヴセピアンはアルメニア出身のブラッド・メルドーも賞賛するピアニストです。


ピアノ・エラ、詳しくはこちらです。→http://thepianoera.com/

まだ当日券、あるようですよ。本気でオススメです。是非!

#コラム

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