100円均一棚とランチの可能性

先日、中央線のある古本屋さんでバイトをしている人に聞いた話なのですが、入り口に「100円均一棚」ってありますよね。あの棚の売り上げが一日に1万~2万円あって、あの棚だけでそのお店の家賃が出るそうなんです。

ちょっとびっくりじゃないですか?

基本的に、あの古本屋の100円均一棚って「撒き餌」だと僕は思っていたんですよね。

通りがかりに「あ、古本屋さんだ。そういえば今、読む本が手元にないから、なんかないかな。あ、この司馬遼太郎のエッセイ、100円かあ。買ってこう」ってなる感じですよね。

で、お店としては、その100円の本は全く儲けにはならないんだけど、とりあえず店内に入ってもらって、「へええ。映画や写真集が充実しているお店なんだ。あ、この和田誠の本、絶版なんだよなあ。1500円かあ。買っておこう」とかなんとか思ってもらうのが「100円均一棚」の役目なんだとずっと信じていました。

それが「そういう役目もあるけど、ちゃんと売り上げとして成立していた」という話を聞いてびっくりしました(これはもちろん中央線の繁盛店の例です。そうでもないお店はたくさんあるようです)。

           ※

と僕が誤解していたのは、お店ってとにかく「一度、入ってもらう」というのがすごく重要なんです。

あなたも経験ないでしょうか。

本当は近所の感じの良さそうな八百屋さんで買うと、気のいいおばちゃんと話せたりして「何か楽しいことが起こりそう」とはわかっているけど、どうしても、ちょっと高いはずなのにいつものコンビニに寄ってしまうことってありますよね。

人間ってどうしても「ここは自分の陣地」という縄張り感覚があるから、ついつい「知っているいつものお店」に入ってしまって、「知らないお店」ってどうも腰が引けて入れないものなんです。

それで、入り口に「買いやすそうなもの」を置いて、「とりあえず店内に入ってもらう」というのが「100円均一棚」やお肉屋さんや八百屋さんの「今日のおつとめ品」だと思っていたんです。

それが、そうでもないんですね。

                 ※

でも、実は同じことを感じたことがありまして。

bar bossaは短い期間だけ、「ランチタイム」をやったんですね。

そしたらすごくお客さま、来店してくれたんです。

もうとにかく忙しくて忙しくて、やめちゃったんですね。

普通、飲み屋が「ランチタイム」をやるって、僕はずっと「撒き餌」だと思ってたんです。

あなたも経験ないでしょうか。

会社の近所に結構良い雰囲気のレストランが出来たんだけど、まだ誰かが行ったという情報もなくて「どんなお店なんだろう」ってずっと前を通りながら気になっていたら、「あ、ランチもやってるんだ」と思って、「じゃあ、お昼に同僚と来よう」とか思って、「パスタ800円コーヒー付き」みたいなのを食べに行きますよね。

で、内装を見たら、すごく可愛いし、黒板の夜のメニューを見たら、「へえ、カポナータが500円で、白ワイングラスが500円なんだ。じゃあ気軽に来れるかな」とか思って、夜にちょっとデートっぽく使ってみる、なんてこと、ありますよね。

僕は「飲み屋のランチ」って全部が「その取りあえずお客さまに来店してもらうきっかけ」だと思ってたんですね。

そしたら、「ランチ人口」って会社がたくさんある街ではすごく多いんです。

で、考えたみたら、ほとんどの世の中の大人は「朝と夜は家で食べる」けど「昼は外で食べる」んです。

圧倒的に外食は「昼食人口」の方が多いんです。

だから、本当はお酒やコーヒーなんかは出さないで、とにかく「昼から夜の8時くらいまで」ずっとずっと「定食」を出すお店の方が実は効率が良いんだなあって気がつきました。

ええと、これからカフェとかバーとか始めようと思っている方、「コーヒーを飲む人口」と「お酒を飲む人口」そんなに多くないですよ。それよりも「ランチを食べる人口」の方が圧倒的に多いです。最初から「お食事だけ」の方が効率良いと思います。

                ※

冒頭の「100円本を買う人」も実は一日に100人以上はいるという「意外な事実」を僕は知らなかったわけですし、外食も「実は昼食人口が一番多い」という「意外な事実」に僕が気づかなかっただけで、もしかして「本当はそこには求めている人がたくさんいるのに、みんな気がつかなくてとりこぼしている」っていうマーケット、結構あるような気がしています。 

お店を始めるときって、「こういうお店があったら良いなあ」とか「こういう新しいメニューで世の中を驚かせたいなあ」とかが多いと思うのですが、意外と見過ごしがちなのが、「そんなのを求めている人口がそもそもあまりいない」とか「良いお店なんだけど、別に一生のうちに一回いけば充分(行く回数が少ない)」とか、ってことなんですよね。ご参考までに。

僕のcakesの連載をまとめた恋愛本でてます。「ワイングラスのむこう側」http://goo.gl/P2k1VA

#コラム

この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?気軽にクリエイターを支援できます。

note.user.nickname || note.user.urlname

サポートしたいと思ってくれた方、『恋はいつもなにげなく始まってなにげなく終わる。』を買っていただいた方が嬉しいです。それはもう持ってる、という方、お友達にプレゼントとかいかがでしょうか。

嬉しいです! ええと、シェアとかしていただけたらもっと嬉しいです…
92

林伸次

備忘録