小説を読む魅力は「疑似体験」と「感動」だけだと思っていたのに、「あるある」も大きいんですね

僕の母が「小説の魅力は、自分の全く知らない世界や人生を体験できることだ」ってよく言ってたんですね。

母は『赤毛のアン』が好きで、日本の四国にいながら、違う世界の全く知らない女の子の視点になって、その世界で生き生きと過ごせたことが、読書の醍醐味だと感じたそうなんです。

確かに小説の魅力はまずそこですよね。僕たちは時には王様にもなれるし、殺人者にも大泥棒にもなれるし不倫もできます。SFなら宇宙の生物の気持ちもわかるし、違う時空に飛び越えることもできます。

そういう空想の世界で羽を広げて大空をかけまわるのが、小説の魅力のひとつです。

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あと、もうひとつ小説の魅力がありまして、泣いたり怒ったり笑ったり切なくなったりエッチな気持ちになったり感動したりという、心を揺り動かされるということでしょうか。

「泣けた~」とか「切ない!」とかそういうのって小説を読む魅力ですよね。

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あとひとつ、先日、某編集者さんに僕の小説をチェックしてもらってて、「あ、そうか」と思った「小説の魅力」というのがありまして、「あるある」なんです。

「あるある」と書いてしまえばすごく軽い印象でいまひとつ伝わらないですよね。

例えば今話題の『やれたかも委員会』。あれって本当に「やれた」とか「やれない」とかって盛り上がるのも面白いのですが、もうひとつの楽しみ方として「そうそう、わかるわかる、自分にもこういうのに似たシチュエーションがあった。わかるなあ。あのとき、自分もやっぱりどう行動すべきだったのかなあ。わかる」っていうのがあります。

要するに「あるある」なんです。

「そうそう。これと全く同じような体験した」とか「ちょうど自分も同じようなことを考えていた」とか「わかるわかる。そうなんだよ。この気持ちなんだよ」って感覚です。

で、その某編集者さんが、「結局、人は自分のことに一番興味があるから、どうしても自分の経験にひきつけて『あるある』に反応しちゃうんです」とのことでした。

なるほどなるほど。確かにそうですよね。結局人は自分のことが一番好きで、自分の経験と「重なる話」があれば、「そうそう、そういうのってあるなあ。自分もそういうのあった」って反応してしまうというわけです。

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ちなみにどうですか? おそらく小説を書く人や小説を読むのが自分の人生のすべてみたいな人って「あるある」って邪道のような気がしていませんか?

僕も実はそんな気がしていたのですが、考えれば考えるほど、実は実は、この「あるある」ってすごく奥が深いものなのかも、人が抱えている「かつての経験」をだぶらせて、それを揺り動かすのって、面白い表現なのかもと考え始めたところです。

#コラム

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