僕は彼に、レールの幅なんて覚える必要ないよと言いたかった

先日、井の頭線に乗っていたときのこと。

お父さんとお母さんはどちらも30代後半くらいで、編集者とかやっていそうな雰囲気です。そして一緒にいるのは5、6才かなって感じの、メガネをかけたちょっとオタクっぽい息子さんで、3人で色々と話をしていたんですね。

で、そのオタクっぽい息子さんは、どうやらすごく電車が好きみたいで、その両親の前でいろんな電車の知識を披露していたんです。

そんなとき、お母さんが突然、「井の頭線と京王線のレールって同じ幅なのかなあ」って言ったんです。

僕も「あ、どうなんだろう」ってちょっと気になったので、耳をすませていたんですね。

そしたらそのオタクっぽい息子さんが「どっちも京王線だからレールの幅は同じだよ」って言ったんです。

そしたらお父さんが「いや、確か京王線の方が幅が広かったんじゃなかったかな」って言ったんです。

で、僕がそのご夫婦を編集者と思った理由がそこにもあるのですが、「調べてみよう」って言って、お母さんがすぐにスマホで検索したんです(編集者の人って疑問があれば絶対にその場ですぐに調べます)。

そしたらお母さんが「あ、京王線のほうが幅が広いみたい。へえ、井の頭線は○○センチで、京王線は○○センチなんだ」って言ったんですね。

で、その瞬間、そのオタクっぽい息子さんの顔を見たら、もうとにかくすごく悔しそうなんです。さっきまで、「僕は電車に詳しいから、お父さんとお母さんに教えてあげる」って立場だったのに、レールの幅っていう、全く気にしていなかった件で、お父さんに負けたから、もう悔しくて悔しくてしょうがないって顔なんです。

で、僕としては「そうかあ、男の子ってこんな年齢の頃から、どっちが知識が上かっていうのを競い合って、負けたらこんなに悔しそうになるんだ」って気がついてびっくりしたんですね。

たぶん、この男の子、この件ですごく悔しくて、後で、日本中の全部の電車のレールの幅を覚えるだろうし、車体の大きさとか、車両の数とか、そういう色んなスペックを、どう質問されても答えられるように頑張って覚えるはずなんです。

で、僕がそのお父さんだったら、「あのね、そういう知識は、今はインターネットに全部書いてあるから、別にそれを覚える必要はないんだよ。そんなことよりも、これからの君の人生は、このインターネットの仕組みを考えたり変えたり出来る人とか、あるいは電車のレールの幅を決める側の人とかになる方が良いと思うよ」ってアドバイスしたいんですね。

でも、その男の子は、たぶんこれから「レールの幅」を一生懸命覚えて、「え? そんなことも知らないの?」っていう側の人生に行こうとしているのかなあと思うと、男の子って大変だなあと思いました。

#コラム

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この記事は投げ銭制です。この後、オマケで僕のちょっとした個人的なことをすごく短く書いています(大したこと書いてません)。今日は「また恋愛取材」です。

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