星になった女の子

今日は「星の女の子」が来店した。

彼女はキールを飲みながらこう言った。

「夜空からこのバーでみんなが話しているのを見ていると、私も久しぶりに誰かと話したくなって、降りて来ちゃいました」

「久しぶりにということは、以前は星じゃなくて人間だったんですか?」

「いえ。人間ではなくて魔法使いだったんです」

「魔法使い。それがどうしてまた星になったんですか?」

「じゃあ今日は喋っちゃおうかな」

「是非、聞かせて下さい」

「私、魔法使いだってことは隠して、普通に人間の学校に通って、普通の人間の女の子として生活してたんです。

でも、その条件として魔法使いの長老からは『絶対に自分が魔法使いだって知られてはいけない』って約束もしたんです。

そしてその学校で恋をしました。

私が恋をした相手は星が大好きで、夜の間ずっと天体望遠鏡をのぞいていても飽きないような男の子でした。

男の子は『いつか新しい星を見つけて僕の名前をつけるんだ』というのが口癖でした。

そして私、ある日、自分の部屋でその男の子の運命を占ってみたんです。

もしかして自分のこの片想いがいつか両想いになる日が来るんじゃないかな、10年後には結婚してるかも、なんて思ったんです。

すると、とんでもないことがわかりました。

三日後に彼が丘の上で星を眺めていると突然、嵐がやってきて、雷がその彼に落ちるらしいんです。

私は彼に『三日後に星を見に行くのだけはやめて』ってお願いしました。

でも彼は、『もう少しで新しい星がみつかりそうだから』って、私のお願いを断りました。

そしてその日がやってきました。

さっきまで夜空に星が瞬いていたのに突然あたりは暗くなり、ぽつりぽつりと大粒の雨が降り始めました。やはり嵐がやってきたのです。

いつもは静かだった丘に、荒れ狂ったような雨風が吹き荒れています。

彼は傘を持ってきていなかったので、大木に寄り添って嵐が過ぎ去るのを待ちました。

するとその時、『ダーン!』と大きな雷が落ちた音がしました。

私の占いはあたっていたんです。

彼はびっくりしましたが、かすり傷ひとつなく無事でした。

そうなんです。その雷は彼の代わりに私が受け止めたんです。

それでね、気がついたら私、星になっちゃってたんです」

「そうなんですか」

「あ、話はこれで終わりじゃないんですよ。この新聞の切り抜きを見て下さい。彼がその時から10年後についに新しい星を発見したんです。

そしてその星の名前がなんと私の名前なんです。記者会見で『その星の名前はどういう由来なんですか?』と聞かれて、彼、こう答えてるんです。林さん、読んでみて下さい」

【昔、好きな女の子がいたのですが、ある日突然いなくなっちゃったんです。その後すごく探したのですが、みつからなくて。それでいつか新しい星を見つけたとき、その女の子の名前を付けると、どこかでその子が、僕がついに新しい星をみつけたんだ、って気づいてくれるかなって思って】

「林さんも一緒に飲みませんか」と星の女の子が言うと、魔法でもう一杯新しいキールを目の前に出した。

僕たちはキールで乾杯して、この地球のどこかで相変わらず夜空を眺めている星好きの男の子のことを思った。

※僕のcakesの連載をまとめた恋愛本でてます。「ワイングラスのむこう側」http://goo.gl/P2k1VA

#小説 #超短編小説

この記事は投げ銭制です。この後、オマケですごく短い文章があるのですが、小説の時は「どうしてこういう話を思いついたのか」を書きます。

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星になった女の子

林伸次

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林伸次

超短編恋愛小説