サンデー・モーニング
毎月第4週目の日曜日の朝は私の部屋のベッドの中で必ず彼がいた。
朝の7時頃までは彼にくっついて彼の匂いを嗅いでいるのだが、8時を過ぎると彼はベッドから抜け出し、私のキッチンで朝食を作り始めた。
彼はイタリアン・レストランのシェフだから、料理は上手だった。冷蔵庫を開けてあまっているアスパラガスやトマトやアボカドを使って美味しいサラダを作った。ベーコンをカリカリに焼いてスクランブルエッグも作った。そして冷凍室に残っていたバゲットを焼き直しながら、同時にコーヒーをいれた。さすがに18歳の時から20年間もキッチンに立ち続けてきたので手際がすごく良い。
私がベッドからその彼の手際の良さをぼんやり見とれていると、彼が「朝ご飯出来たよ」と声をかけてくれた。
私はベッドから出て、ジャージをはき、Tシャツを着て、テーブルまでねぼけまなこのまま歩いた。
そして二人で朝ご飯を食べながら「今日の日曜日はどういうふうに過ごすか」というのを二人で話し合った。
面白そうな映画があるかどうかチェックして、銀座にするか新宿にするか悩んだり、それとも車に乗って近くの温泉にいくか、それとも港の方にいって美味しいお寿司を食べるか二人で話し合った。
それが私たちのいつもの第4週目の日曜日の朝だった。
でも先週、私とのことが彼の奥さんにバレてしまった。
そして彼と彼の奥さんが私の職場の外で待っていて、一緒に喫茶店に入って、彼は奥さんに「こんなことはもう2度といたしません」と言って謝った。
奥さんの前で小さくなっている彼は、私が知っている彼とは全然違っていた。
私も「ごめんなさい。2度と彼には連絡はとりません」と奥さんに謝った。そして奥さんに「あの、ひとつだけ質問しても良いですか?」と言ってみた。
奥さんが「何ですか?」と冷たい声で言った。
「彼は朝ご飯は作りますか?」と私は聞いた。
奥さんは「この人は料理はお店でしか作らないって決めているそうです。家では私が作る料理の方が美味しいそうです」と言った。
私は「ふーん」と思った。そして彼は本当に私に連絡をとらなくなった。私も悔しいから連絡はとらなかった。
そして私の第4週目の日曜日の朝は他の日曜日の朝と同じになった。
僕のcakesの連載をまとめた恋愛本でてます。「ワイングラスのむこう側」http://goo.gl/P2k1VA
この記事は投げ銭制です。この後、短くオマケでこの話を思いついた経緯を書いています。
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