私小説3
ペットショップで犬を買うってどういう段取りなんだろうとずっと疑問だったのだが、やっぱり他の買い物と同じだった。僕たちはカウンターに通され、その犬の血統書をもらったり、予防注射の話を聞いたり、保健所の登録の話を聞いたりして、クレジットカードで支払った後は「はい、こちらですね」とその犬が入った箱を手渡された。
「ああ、やっぱりこうやって手で持って帰るんだね」と僕が言うと、妻が
「だってそれ意外どうやって持って帰るの。宅急便じゃないでしょ」と言った。
そしてその子犬はまだすごく小さくて、箱はとても軽かったので、娘が持つことになった。
娘自体もまだ小さくて、全然お姉さんという感じではなかったのだが、なぜかその子犬が入った箱を抱えていると、お姉さんの雰囲気になっていた。
今でもしっかりと目に焼き付いているシーンがある。もう二度と来ることはない小田急線の知らない寂れた駅のホームで、娘が小さな子犬が入った箱を抱えているという風景だ。
ああ、あの中に小さな命が入っているんだ。なんだかすごいことを始めてしまったけど、これで良かったのかな、まあ娘もすごく嬉しそうだし、これで良かったんだろうな、とホームで僕は何度も思った。
自宅に帰ってくると、子犬を箱から出してみた。その子犬はまず自分の周りからそして少しづつ部屋のあちこちをくんくんと嗅ぎ回った。
子犬は娘に見てもらって、僕と妻は早速近所のホームセンターに犬の小さなケージを買いに行った。そしてドッグフードと餌とお水用のお皿も買って自宅に帰った。
帰ってくると、その子犬はいつの間にかとても元気になって、小さいくせしてキャンキャン吠えて、家中を走り回っていた。そして娘が嬉しそうにそれを眺めていた。
その子犬の名前は娘が「ナクル」という名前をつけた。名前の意味は別になく、なんとなく響きが好きでつけたらしい。そして、僕たちはすぐに「なっちゃん」と呼ぶことになった。
プロローグ終わり
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