声をかけたくなる人

渋谷って歩いていると、必ず知っている人に会うんです。

僕は八百屋でライムやミントを買ったり、東急ハンズで電球を買ったり、ヴィロンでバゲットを買ったり、ドンキホーテで洗剤を買ったりと、渋谷中を毎日ウロウロしているんですね。

そしたら必ず、同じ飲食業の人や、レコード会社の人がタワーやHMVに営業に行ってる途中とか、知ってるミュージシャンがNHKに収録にとか、あるいはこのnoteの社員がお昼ご飯に出ているところとか、何かといろんな人にすれ違うんです。

でも、実は僕はそのほとんどの人たちに声をかけません。

理由は、僕はネクタイをして後ろにお酒のボトルがないと、みんな「bar bossaの林」だとわかってくれないんです。「こんにちは」ってお昼の路上で声をかけても一瞬「誰だっけ」って表情になるんです。

それで基本的には声をかけないし、向こうも「bar bossaの林」だと気づかないので、スルーということになります。

でもたまに、20人に1人くらいの割合で、「こんにちは」って声をかけたくなる人がいるんです。

その人たちってどうして僕は声をかけたくなるんだろうっていつも考えていまして。

最初は「仲の良さが基準なのかな」って思ったんです。やっぱりそんなに話したことない人や、なんとなく嫌いな人には声はかけないですよね。

でも、一回、結構仲が良い友人をスルーしたことがあって。その時は「ここであの人に声をかけると5分くらい『最近どうしてる?』って会話をしなきゃいけないから、お互い忙しいし、ここはスルー」って思っちゃったんです。

で、これはやっぱり「有名な人とか偉い人とかに声をかけておくと僕がいろんな仕事やお店の売り上げなんかに有利に働くから」そういう人たちに声をかけているのかなあ、やっぱり人間ってそういうモノなのかなあって考えてみました。

でも、全くそういう偉かったり有名だったりするわけでもない、ある若い知人に「あれ、仕事中?」って声をかけたこともあったので、そういうわけでもないんだなあと思いました。

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それで、改めて、「街中でめったに誰かに声をかけない自分が、あえて声をかけてしまった人」というのを、頭の中で「あの人とあの人とあの人と…」って感じでリストアップしてみたんです。

そしたら全員の共通点が「人に対してフラットな接し方をする」というものだったんです。

「フラットな接し方」、もう少し説明しますと、「上から目線でも下から目線でもなく、本当に自然に『あ、林さん、こんなところで』」って表情を見せるんです。

人と人ってどんな状況であろうと「どっちが立場が上なのか下なのか」っていうのをなんとなく意識しあっていますよね。

男性どうしなら「どっちが偉いか」「どっちがお客か」「どっちが有名か」などなど。

女性どうしなら「どっちが綺麗か」「どっちが若いか」「どっちが勝ち組か」とかとか。

異性どうしでも「どっちが追いかけているか」「どっちが恋愛市場で上のヒエラルキーか」「二人で歩いているとどっちが周りの目をひくタイプか」などなど。

そういう「上と下の関係」って、どっち側であろうと「多少はストレス」なんです。

「あ、○○さん、いつもお世話になっています」とか逆に頭を妙に下げられることもあるのも結構面倒くさいです。

でも僕たちは「誰かと接しているとき」、「お客さま」とか「部下」とか「見下される人」といった「役割」を演じなきゃいけないんです。大変です。面倒くさいです。

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でもたまに、本当にたまに「上も下も何にも感じさせない人」というフラットな人がいるようなんです。

そしてその人たち、全員が「人生、上手く転がっている」ように思います。

お金とか地位とかじゃないんです。「声をかけたくなる人」って上手く行ってます。

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「私、街、歩いているといろんな人に会うんだよね」という方、いると思います。

それ、「人に会う確率が高い」のではなくて、「みんながつい声をかけたくなるタイプ」なんだと思います。

僕もそんな風になりたいなといつも思ってはいるのですが、「人と接する時にフラットになる」って、結構難しいです。

#コラム

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